第3戦千葉 RACE REPORT:7秒でついえた三連覇の夢

室屋義秀のいないラウンド・オブ・8――。千葉・幕張海浜公園に集まった日本のエアレースファンが初めて見る光景だった。

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップの今季第3戦。日本で開催されて4回目となるレースで、室屋は初めてラウンド・オブ・14敗退に終わった。

しかもタイムすら残らない、オーバーGによるDNF。予想もしなかった結末に、レース会場やテレビの前で観戦していた多くのファンが言葉を失ったに違いない。

それはスタートからわずか7秒足らずの出来事だった。

 

©️Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 

前日の予選で3位につけた室屋は、レースデイの初戦、ラウンド・オブ・14で予選12位のマット・ホールと対戦。先に飛んだホールが55秒529というこの日最速のスーパーラップを記録したとはいえ、仮に室屋がこれに届かなくとも、前の組で敗れたフアン・ベラルデの56秒772を上回れば、ファステスト・ルーザーとしてラウンド・オブ・8に進出できる可能性は高かった。昨年終盤戦から続く室屋の安定したフライトを考えると、それはさほど困難なタスクとは思えなかった。

ところが、である。夏を思わせる強い日差しに照らされた緑と青の機体がゲート3を抜け、バーティカルターンに入った直後、Gメーターが大きく振れた。最大荷重制限の12Gを超えたことによるDNFの判定は、室屋がホールに敗れたことはもちろん、ファステスト・ルーザーとしてラウンド・オブ・8に進出する可能性を失ったことも意味していた。

 

©️Samo Vidic/Red Bull Content Pool

 

母国レース3連勝の夢は、一瞬にしてはかなく消えた。

レッドブル・エアレース史上初の快挙達成がかかった、世界チャンピオンの凱旋レース。例年以上に注目を集める一戦に、当然、室屋には相応のプレッシャーがかかっていただろう。

だが、室屋は「プレッシャーがまったくなかったわけではないが」と認めつつも、重圧に押しつぶされたとの見方を真っ向から否定する。

「自分のコンディションとしては決して悪くなかった。というより、正直言って、今日はフィーリングがこう......、何ていうか......、"勝てる感じ"があった。だから、この結果がすごく残念なんです。ホームレースはハードだけど、(敗因は)プレッシャーじゃない。それは乗り越えられていたと思うし、それよりも今日は技術的な問題のような気がします」

室屋は、このレースから新たに小型化した垂直尾翼を投入し、予選までを飛んでいたのだが、それによる操縦感覚の変化に対応しきれず、レースデイでは従来のものに戻す決断を下していた。

 

©️Balazs Gardi/Red Bull Content Pool

 

本人にしてみれば、「結果的に(レースデイでは)使わなかったけれど、それは想定内の出来事」であり、「元に戻すことになったとしても、操縦にはほぼ影響ない」という考えゆえの投入だった。実際、「レース後のデータを見ても、12Gを超えるような操作はしていない」という。

「なぜオーバーGになったんだろうっていうのが、正直なところです。12Gを超えたときは自分の感覚としてだいたい分かるのに、今日はそういう感じがなかった。ほんのちょっとの操作感覚の違いとか、そういういろんな要素が混ざり合った結果だと思います。全体的にもうちょっと正確なトレーニングをしていく必要があるとは感じています」

一昨年の序盤戦で、室屋はオーバーGに悩まされ続けた。その苦い経験からトレーニングを繰り返し、徹底してGの感覚を体に叩き込んだ。G対策は鉄壁のはずだった。事実、エンジントラブルに端を発した急激なスピード変化に対応し切れなかった昨年の開幕戦以来、室屋は一度もオーバーGを犯していない。

 

©️Balazs Gardi/Red Bull Content Pool

 

しかし、だからこそ、鉄壁の対策がほころんだショックは小さくない。

オーバーGを犯すのが10戦ぶりなら、ラウンド・オブ・14敗退は昨年の第5戦以来6戦ぶり。久しく味わっていなかった屈辱感が室屋を襲う。

「ショックは......まあ、結構、そうですね。ラウンド・オブ・14で終わってしまってガックリなのと、しかもホームレースだったので二重にガクガクッていう感じではありますけど......」

室屋はそう語り、自分に言い聞かせるように言葉をつなぐ。

「とはいえ、今日はちょっとガクッとしていてもいいと思っています。1日くらいガクッとして、しっかり休んで、次のレースはもうすぐなので明日から気を持ち直してやるしかないですね」

 

©️Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 

次回、今季第4戦は6月23、24日、ハンガリーのブダペストで行われる。機体の輸送や自身の移動などを考えれば、反攻の準備に使える時間はわずかである。

「失敗から学ぶことはとても多い。残り5戦を勝てるようにしっかり準備したい」

ショックはある。悔いもある。だが、世界の頂点を目指すなら、下を向いている暇はない。

 

(Report by 浅田真樹)

 

■Information
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©️Jason Halayko/Red Bull Content Pool
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