第4戦ブダペスト RACE REPORT:正念場を迎えたチャンピオン

負の連鎖が止まらない。

昨年のレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップで年間総合優勝を果たした室屋義秀は、今年のシーズン当初は昨年終盤の勢いそのままに、安定した強さを見せていた。

開幕戦では、ファイナル4でマイケル・グーリアンに後れは取ったが、2位でフィニッシュ。続く第2戦でも、危なげなくファイナル4へ進出していた。

だが、今にして思えば、この第2戦のファイナル4を境に潮目が変わった。

 

©️Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 

このとき室屋はバーティカルターンに入る手前のゲートで突然の風にあおられ、インコレクトレベルのペナルティを受けた。結局、これが響いて4位に終わり、昨年第7戦から4戦連続となる表彰台を逃している。

それでも2戦連続のファイナル4進出である。当時は取るに足らない、ちょっとしたアクシデントが起きただけかに思われた。だが、これこそが現在に至る負の連鎖の始まりだったのだ。

機体に不具合が発生しているわけではない。もちろん、パイロットの操縦に大きな問題があるわけでもない。にもかかわらず、2戦連続の惨敗である。

地元・千葉での第3戦でオーバーGによるDNFでのラウンド・オブ・14敗退を喫すると、まるでそのときのVTRを見ているかのように、今回の第4戦でもオーバーGによるDNFでラウンド・オブ・14敗退に終わった。

 

©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

室屋のレースデイのフライトは、時間にして10秒足らず。ゲート7を通過し、垂直方向へ機首を上げた瞬間、Gメーターはあっけなく制限規定の12Gを超過した。

メンタルトレーニングに力を入れ、最近では少々のことには動じなくなった室屋も、この結果にはさすがに顔色を失っていた。目はうつろで、何を聞いても口が重い。レースを終えて、しばらく時間が経った後でもなお、自分の身に起きたことがまだうまく飲み込めていないかのようだった。

「レーストラック自体は風が弱かったのに上空は風が吹いていた。自分としては予選から変わらず、トレーニングをしてきた通りの操作をしたけれど、(バーティカルターンに)上がった瞬間、ガスト(突風)にボンと当たった感じでした。何が起きたのかと言われれば、それ以上でも、それ以下でもないというところですね」

 

©️Balazs Gardi/Red Bull Content Pool

 

第3戦で犯したオーバーGには、先に飛んだマット・ホールのスーパーラップに少なからず焦りを感じていたことが影響していた。「無意識のうちに、少し力が入ったのかもしれない」。室屋自身もそう認めている。

だが、今回に関しては、先に飛んだマイケル・グーリアンのタイムを「全然速いとは思っていなかった」。室屋が事前にシミュレートしていたタイムは、ベストなら56秒台なかばである。グーリアンの57秒504というタイムを聞いたときには、「少しペースを抑えても勝てるなと思っていた」のだ。

「プッシュするつもりもなかったし、千葉とは状況が全然違った」

だからこそ、それでも起きたオーバーGに、室屋が受けたショックは小さくない。

 

©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

もちろん、ディフェンディングチャンピオンとして、敗戦の理由を「アンラッキー」の一言で片づけてしまうことには抵抗があるのだろう。「機体の性能が上がり、以前とはスピードレンジがだいぶ変わってきていて、操縦が非常に繊細になっている。その分、もっとコントロールの精度を上げる必要があるとは思います」。室屋はそう言って、自身の操縦技術に2戦連続オーバーGの要因を求めようとするが、「でも、やはりあれでオーバーGになってしまうと、ちょっと......、これを防ぐにはどうすればいいのか......」というのが、正直なところだ。

しかも、オーバーGは「一昨年散々苦しんで、トレーニングを重ねてようやく解決した問題」である。室屋が「またか、というやるせなさを感じる」のも無理はない。

第3戦でチャンピオンシップポイントを獲得できなかった室屋にとって、第4戦のラウンド・オブ・14でグーリアンとの直接対決が巡ってきたことは、ポイント差を大きく縮めると同時に、これまでの悪い流れを変えるビッグチャンスだった。しかし、敗因はどうあれ、ポイント差をさらに広げられる結果に終わった。室屋が重い口をどうにか開く。

「チャンピオンシップ(年間総合優勝)は結構厳しくなりましたね。でも、長くレースをやっていれば、こういう流れの悪いときも必ずある。特効薬はないので、一個ずつ丁寧にピースを積み直していくしかない。チーム状態が悪いわけではないので、とにかく気持ちを切り替えて、後半戦に向けてやれる限りの準備をするだけです」

 

©️Balazs Gardi/Red Bull Content Pool

 

これで今年の前半戦4レースが終わり、室屋の成績は2、3、14、11位でトータル19ポイント。14、1、1、3位でトータル39ポイントだった昨年を大きく下回っている。現在のランキングも、第3戦終了時から順位をふたつ落とし、5位に後退。45ポイントでトップに立つホールに、26ポイントもの大差をつけられている。

連覇の夢がついえたわけではない。数字上の可能性はもちろん残っている。だが、現実的な可能性を考えると、状況は極めて厳しい。そう言わざるを得ない。

 

(Report by 浅田真樹)

 

◾️Information

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