FEEL THE AIR@カザン:全く文字が読めない地での初開催

現地に行ったつもりになれるエアレース旅行記

ロシアのカザンで開かれたレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ第5戦は、とにもかくにも、人、人、人だった。


過去、(他都市ではあるが)日程まで正式に発表されながら、結果的にキャンセルとなり、なかなか実現しなかったレッドブル・エアレースのロシア開催。ようやく正真正銘の開催までこぎつけたロシア初のレッドブル・エアレースとあって、カザンの人たちもこの日を楽しみにしていた人が多かったようだ。

 

レース会場となったのは、町の中心部を流れるカザンカ川。前回レースのハンガリー・ブダペストに続く、川の上でのレースである。

 

メインのレース観戦場所となっていた川岸は、もともと遊歩道とし整備されてある場所であり、それに沿ってレストランやショップが立ち並ぶ。カザン市民にとっては憩いのエリアだ。週末となれば、何もなくても大勢の人たちが集まってくる人気スポットとあって、非常に多くの観客が詰めかけていた。

 

前戦に続く、川の上でのレースとはいえ、カザンのレース会場となったカザンカ川は、ブダペストを流れるドナウ川とは趣がまったく異なる。ドナウ川がブダペスト中心部を貫くように流れる、まさに川だとすれば、こちらのカザンカ川は川幅が広く、さながら大きな湖のよう。

また、川の周囲も比較的色調や様式が似た歴史的建造物が立ち並ぶブダペストに対し、こちらカザンは急速な発展途上とあって、レース会場を取り囲む建物も雑多。ブダペストとは違い、どこを切り取るかによって、まったく違う雰囲気が生まれてくる。

ライブ中継には、"最も絵になる背景"として世界遺産に指定されているカザン・クレムリンが何度も登場していたが、実際は味気ない高層マンションもあれば、遊園地の観覧車や屋外プールのウォータースライダー、さらには来年開かれるサッカーのワールドカップで試合会場として使われるスタジアムもある、といった具合だ。

 

ちなみに、この茶碗のような形をした独特の建物は、カザン・ファミリー・センター。カザンのランドマークとも言える施設であり、今回のレースのトロフィーもこれをモチーフに形作られていた。

 

ちょっとした土手(ここにレストランなどの商業施設が並んでいる)を挟んで、川岸の遊歩道との反対側には、広い芝生の公園が広がっており、そこでは様々なイベントが開かれていた。


まったく読めないロシア語で書かれたゲートも、なかなか新鮮だった。

 

パイロット紹介の看板も、当然ロシア語。難解な文字で大きく書かれているのは、通常のアルファベットにすれば、もちろん「YOSHIHIDE MUROYA」だ。

 

公園では様々なサイドアクトも行われており、サッカー人気が高いお国柄もあってか、フリースタイル・フットボール・コンテストには黒山の人だかりができていた。

 

川岸の遊歩道内には、メリーゴーランドや小型の電車など、子供が遊べるアトラクションも多く、ここに多くの人が集まるのもうなずける。

 

エアレースが開かれていないときでも、ここをブラブラと散歩する人は多いのだろうなと想像できる、何ともほのぼのとした雰囲気だ。

 

公式練習が行われた金曜日には、ここでウェディング用の写真撮影をするカップルを見かけた。つまり、ここは絶好の撮影ポイントでもあるのだろう。カザンがあるタタールスタン共和国はイスラム文化の影響も強く受けており、イスラムにおける安息日である金曜日は結婚式が多いのだそうだ。

 

この遊歩道は夜になると、きれいにライトアップされる。夜は夜で、また別の雰囲気の賑わいを見せてくれる。

 

会場では飲食物のブースも充実しており、カザン(ロシア?)ならではの飲み物や食べ物に人気が集まっていた。
ビールのタップのような注ぎ口から出てくるのは、クバック。ロシアだけでなく、東ヨーロッパで広く飲まれており、たとえて言うなら、ノンアルコールの甘い黒ビールといあった感じの飲み物だ。

 

また、常にブースの前に長い行列ができ、一番人気を誇っていたのが、とうもろこし。(恐らく)蒸したところに塩をかけただけのシンプルなものだが、老若男女を問わず、多くの人がこれにかぶりついていた。

 

川岸から少し離れていても、ちょっとした高台は人気の観戦スポットになっていた。公園からあたりをぐるっと見回せば、いたるところに人だかりができていた。

 

高台にあるカザン・クレムリンの前もまた、贅沢にして、絶好の観戦エリアだ。

 

とにかく人が多いとあって、ボランティアスタッフが大活躍。

 

人混みでの観戦を避け、のんびりと大画面観戦する親子。

 

初めて見るエアレースに小さな子供も大興奮。

 

やっぱり生で、しかもできるだけ近くで見てみたいという人は、川岸の土手の部分で立ち見観戦。

 

お父さんの肩車は一番の特等席だ。

 

とはいえ、ここまで紹介してきたのは、実は予選が行われた土曜日までの様子。強い日差しと涼しい風があいまって、気持ちよく過ごせたのはこの日までだ。レースデイの日曜日はあいにくの雨模様で、昼過ぎには一時かなり雨足が強くなることもあった。

それでも、2枚の写真を見比べてもわかるように、雨が降っても客足が衰えることはほとんどなく、雨のなかじっとレースが始まるのを待っている人は(ここだけでなく、対岸の空き地や道路脇にも)多かった。

 

ロシアで初めて開催されたレッドブル・エアレース。恐らく、細かなルールや大会方式など知らずに見ていた観客も多かったはずだが、お祭り好き、新しいもの好きのロシアの人たちには"刺さった"のだろう。すでに来年の開催を(もちろん、正式発表がされているはずもないが)当たり前のこととして、早くも心待ちにしている人にも多く出会った。


日曜日もレース終盤には雨がほとんど上がり、会場も少し明るくなってはいたが、もしも来年もまたここで開催されるなら、太陽の下、白熱のレースを見たいものである。

 

 

(Report by 浅田真樹)

 

◾️Information

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