過去のデータから読み解く2018シーズンの行方

過去4シーズンのタイトル争いの展開からシーズン後半戦を占う

Hall leads at the halfway mark

早いもので、Red Bull Air Race World Championship 2018シーズンはすでに前半戦4レースを消化した。この機会に、過去4シーズンの前半戦と後半戦がどのような展開を見せたのかを振り返り、今シーズン後半戦の展望を占う。

今回は、チャンピオンシップが再開した2014シーズン以降の4シーズンを振り返り、前半4戦終了時点・シーズン終了時点でのポイントランキングトップ3をそれぞれ比較しながら見ていく。

 

【2014シーズン】

シーズン第4戦:グディニャ(ポーランド)

第4戦終了時の総合順位:
1位 ハンネス・アルヒ(42ポイント)
2位 ポール・ボノム(29ポイント)
3位 ナイジェル・ラム(26ポイント)

この2014年にRed Bull Air Raceを初開催したポーランド・グディニャでのレースは、素晴らしい内容となった。困難なコンディションの中、ハンネス・アルヒが優勝し、シーズン前半終了時に大きなリードを築いた。アルヒは前半4戦で2勝・2位2回を記録していた。

ポール・ボノムは1勝・2位1回・5位2回という成績で前半戦を終え、総合2位を確保していた。首位アルヒから16ポイント差の総合3位にはナイジェル・ラムがつけた。ラムは第3戦プトラジャヤで優勝し、グディニャでは2位表彰台を獲得していた。

ところが、2014シーズンは後半戦に急展開を見せる。ラムが後半戦全4レースで2位フィニッシュという安定した成績を残した一方、ボノムはわずか1回の表彰台フィニッシュしか飾れず、アルヒも前半戦の好調を維持できなかった。チャンピオン決定は最終戦に持ち越され、ここでラムはこのシーズン5回目となる2位フィニッシュを果たし、4位アルヒ、5位ボノムと続いた。この結果、ラムが2014シーズンのチャンピオンに輝いた。

2014シーズン最終結果:
1位 ナイジェル・ラム(62ポイント)
2位 ハンネス・アルヒ(53ポイント)
3位 ポール・ボノム(52ポイント)

 

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【2015シーズン】

シーズン第4戦:ブダペスト(ハンガリー)

第4戦終了時の総合順位:
1位 ポール・ボノム(34ポイント)
2位 ハンネス・アルヒ(29ポイント)
3位 マット・ホール(29ポイント)

2015シーズン第4戦終了時で総合首位に立っていたのはハンネス・アルヒだった。彼は最大のライバルであるポール・ボノムが開幕2連勝を飾る様子を黙って見ていなければならなかったが、第3戦ロヴィニでシーズン初勝利を飾ってワールドチャンピオン争いに名乗りを上げた。マット・ホールも2位2回・3位1回と大いに健闘を見せ、トップ3は混戦の様相を呈していた。

そして迎えた第4戦ブダベストは、ホールが予選1位を獲得し、キャリア初優勝は目前と見られていた。一方、アルヒは予選3位に入り、ボノムは予選8位と低迷する。

しかし、決勝レース日は風向きが変わった。ボノムとアルヒが揃ってファイナル4進出を果たした一方、ホールはラウンド・オブ・8でマルティン・ソンカに敗北。最終的にブダペストはアルヒが制し、2位ボノム、3位ソンカと続いた。

シーズン後半戦のタイトル争いはホールとボノムの2人による一騎討ちとなった。アルヒはシーズン前半の好調を維持できず、タイトル戦線から脱落していた。後半戦4レースではボノムとホールがそれぞれ2勝ずつを分け合う形となったが、片方が優勝を飾れば、もう片方が2位に続くという緊張感あふれる展開が続いた。この2人の熾烈なチャンピオン争いは最終戦ラスベガスのファイナル4までもつれ込み、このレースはホールが優勝したが、ボノムがしぶとく2位に入賞。この結果、ボノムが通算3度目のワールドチャンピオンに輝いた。

2015シーズン最終結果:
1位 ポール・ボノム(76ポイント)
2位 マット・ホール(71ポイント)
3位 ハンネス・アルヒ(34ポイント)

 

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【2016シーズン】

シーズン第4戦:ブダペスト(ハンガリー)

第4戦終了時の総合順位:
1位 マティアス・ドルダラー(41.25ポイント)
2位 ハンネス・アルヒ(26ポイント)
3位 カービー・チャンブリス(25.25ポイント)

2016シーズン第4戦ブダペストは非常に興味深い内容となった。ブダペストを見舞った季節外れの荒天の影響で決勝レースのファイナル4が開催不可能となり、ラウンド・オブ・8のリザルトを最終結果とする決定が下された。結果、ラウンド・オブ・8で最速タイムを記録していたマティアス・ドルダラーが優勝。開幕2戦で1勝・2位1回というスタートダッシュに成功していたドルダラーは、2位以下に大差をつけて総合首位に立った。

ハンネス・アルヒはさほど悪くない形で前半戦を戦っていたものの、ブダペストで2位入賞するまでは苦しい展開が続いていた(アルヒはブダペストのラウンド・オブ・8で全体2位のタイムを記録した)。このシーズンはカービー・チャンブリスも好調で、開幕から上位入賞を続け、第3戦千葉では2シーズンぶりの表彰台フィニッシュを手にしていた。ところが、2016シーズン後半戦で大きく躍進を見せたのはマット・ホールだった。ホールは開幕から3戦連続で背中の痛みに苦しんだが、第4戦ブダペストで復調の兆しを見せると、第5戦・第6戦を連勝。一気に首位ドルダラーを追い落としにかかる。

ところが、後半戦のホールは2015シーズンと同じ展開に阻まれる。ホールが優勝すればドルダラーが2位につけるという展開が続き、第7戦インディアナポリスでドルダラーが会心のシーズン3勝目を記録。最終戦を待たずにワールドチャンピオンを確定させた。

2016シーズン最終結果:
1位 マティアス・ドルダラー(80.25ポイント)
2位 マット・ホール(55.75ポイント)
3位 ハンネス・アルヒ(41ポイント)

 

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【2017シーズン】

シーズン第4戦:ブダペスト(ハンガリー)

第4戦終了時の総合順位:
1位 室屋義秀(39ポイント)
2位 マルティン・ソンカ(37ポイント)
3位 ピート・マクロード(26ポイント)

1年を通じてエキサイティングな展開となった2017シーズンだったが、第4戦もその例に漏れなかった。ブダペストではカービー・チャンブリスが実に8年ぶりの優勝を飾り、2位にはピート・マクロード、3位には室屋義秀が入った。2017シーズンは、ソンカと室屋が首位を奪い合う展開で、ブダペスト後の第5戦・第6戦はソンカが好調を示す中、室屋は不調に陥った。

しかし、第7戦ラウジッツは室屋がシーズン3勝目を挙げて巻き返し、ソンカは3位でフィニッシュ。これにより、ソンカは室屋に4ポイント差でシーズン最終戦に望む展開となった。その最終戦インディアナポリスでソンカと室屋は揃ってファイナル4へ駒を進み、先行してフライトした室屋が1分03秒026を記録。ソンカがタイトルを獲得するには、少なくとも室屋のひとつ下の順位でフィニッシュするか、室屋のタイムを上回る必要があったが、ソンカはプレッシャーに屈して4位に終わり、チャンピオンは室屋の手に渡った。

2017シーズン最終結果:

1位 室屋義秀(74ポイント)
2位 マルティン・ソンカ(70ポイント)
3位 ピート・マクロード(56ポイント)

 

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【2018シーズン】

シーズン第4戦:ブダペスト(ハンガリー)

第4戦終了時の総合順位:

1位 マット・ホール(45ポイント)
2位 マイケル・グーリアン(43ポイント)
3位 マルティン・ソンカ(34ポイント)

2018シーズン前半戦は、Red Bull Air Race World Championship史上稀に見る展開となった。4戦を終えて優勝したパイロットは3名と、昨シーズンに続く僅差でのタイトル争いが繰り広げられている。

開幕戦はマイケル・グーリアンが並み居るライバルたちを退けて優勝を飾り、それ以降の全レースでファイナル4進出を果たすという好調を維持している。彼が表彰台フィニッシュを逃したのは、低調なフライトに終わったブダペストのみだ。

マット・ホールは前半戦4レース中3レースで彰台フィニッシュを記録。そのうち2レースでは優勝を飾っている。

第4戦ブダペストは、マルティン・ソンカが今シーズン初勝利を飾った。開幕2戦でのDQ(失格)さえなければ、彼もまた毎レースでファイナル4進出を果たしたことになる。しかし、ブダペストで最大のサプライズを巻き起こしたのはキャリア初表彰台を獲得したミカ・ブラジョーだった。彼はいよいよトップパイロット勢に挑もうとしている。

上記のデータは、シーズン前半戦終了時点で総合首位に立っているパイロットがワールドチャンピオン最有力候補だということを示しているが、スポーツの世界は予想通りに物事が進まない。これまでと同様エキサイティングな展開になる2018シーズンRed Bull Air Race World Championshipに、引き続き注目してもらいたい。

 

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◾️Information

2018シーズンRed Bull Air Race World Championship後半戦は8月25日・26日に第5戦カザン(ロシア)で幕を開ける。