ヒストリー

Red Bull Air Race World Championshipの歴史

創設から11シーズンが経過したRed Bull Air Race World Championshipは、究極の三次元モータースポーツとして世界的に高く評価されている。Red Bullのスポーツ部門シンクタンクによってこのスポーツが生み出された当時は、世界が見たことのない最先端のエアリアル・チャレンジを提供することが目標に設定されていたが、現在はその目標を大きくクリアした存在になっている。

Red Bull Air Race World Championshipは開始直後からユニークなビジュアル・スペクタクルを提供する存在として有名になった。高速低空飛行と高精度な操縦が求められるこのスポーツに参戦できるのは、世界トップクラスのパイロットだけだ。

Red Bull Air Race特製の空中レーストラックは、長時間をかけたリサーチと審査を経て生み出されたものだ。たとえば、エアゲートに使用されているユニークな空気注入式パイロンは2002年に考案されたあと、毎年進化を続けて現在の洗練されたデザインに落ち着いた。強度と安全性が両立されているパイロンは、機体がパイロンに接触する、いわゆるパイロンヒットが発生してもたった数分で元の姿に戻すことができる。

 

■年表

 

2003年

2002年にRed Bullのスポーツ部門シンクタンクによって考案されたRed Bull Air Raceは、2003年にWorld Seriesという名前でファーストシーズンを迎えた。他では体験できないビジュアル・スペクタクルを提供したこのスポーツは、すぐにファンとパイロットから注目を集めるようになった。ファーストシーズンは、Red Bull Air Race考案者のひとりとして知られるハンガリー人パイロットのピーター・ベゼネイがチャンピオンの座を獲得し、その貢献にふさわしい結果を得た。

 

2004年

Red Bull Air Race World Seriesとして2シーズン目が開催されたこの年は、11名のパイロットが参戦した。米国・英国・ハンガリーで全3戦が開催された2014シーズンは、米国人パイロットのカービー・チャンブリスがチャンピオンに輝き、ピーター・ベゼネイが2位、英国人パイロットのスティーブ・ジョーンズとドイツ人パイロットのクラウス・シュロットが3位に入った。

 

2005年

名称がRed Bull Air Race World Championshipに変更されて新たにスタートした2005シーズンは、10名のトップパイロットが米国・英国・ヨーロッパの各地で開催された全7戦を戦い、米国人パイロットのマイク・マンゴールドが圧倒的な強さを見せて5勝を挙げて、ワールドチャンピオンに輝いた。36ポイントで王座を獲得したマンゴールドに続いて2位に入ったのはピーター・ベゼネイ(32ポイント)で、3位にはカービー・チャンブリス(21ポイント)が入った。

 

2006年

2006シーズンは11名のパイロットが全8戦を戦い、素晴らしい活躍を見せたカービー・チャンブリスが4勝を挙げてワールドチャンピオンに輝いた。38ポイントで王座を獲得したチャンブリスに続いて2位に入ったのは、ピーター・ベゼネイ(35ポイント)で、3位にはマイク・マンゴールド(30ポイント)が入った。

 

2007年

2007シーズンはスケールアップし、13名のパイロットが初開催となった南アフリカとブラジル・リオデジャネイロを含む全10戦を戦った。オーストリア人パイロットのハンネス・アルヒとロシア人パイロットのセルゲイ・ラクマニンが新たに参戦したこのシーズンのワールドチャンピオンは、マイク・マンゴールドと英国人パイロットのポール・ボノムの間で争われた。共に3勝を挙げていた2人は最終戦終了時に47ポイントで並んだが、優勝決定戦でマンゴールドが勝利し、2度目のワールドチャンピオンを獲得した。3位にはピーター・ベゼネイ(31ポイント)が入った。

 

2008年

2008シーズンは12名のパイロットが全8戦を戦い、オーストリア人パイロットのハンネス・アルヒが、まだ2シーズン目ながらヨーロッパ出身パイロット初のワールドチャンピオンに輝いた。2007シーズンの雪辱を期していたポール・ボノムが前半戦で圧倒的な強さを見せて3勝を挙げたが、ボノムは後半戦で失速。アルヒはブダペストとポルトの2勝しか上げていなかったが、8戦中7戦で表彰台を記録していたため、最終的にボノムの54ポイントを上回る61ポイントでワールドチャンピオンに輝いた。3位にはカービー・チャンブリス(46ポイント)が入った。

 

2009年

2009シーズンのRed Bull Air Race World Championshipは、初のアジア人パイロット(室屋義秀)、初のカナダ人パイロット(ピート・マクロード)、初のオーストラリア人パイロット(マット・ホール)を含む4名のニューパイロットを迎え入れ、総勢15名となった。尚、4人目のニューパイロットは、史上2人目のドイツ人パイロット、マティアス・ドルダラーだった。

このシーズンはハンネス・アルヒがスタートダッシュに成功し、第4戦まで首位に立っていたが、ここでポール・ボノムが首位に立つと、そのまま残りのシーズンも好調を維持して合計3勝を記録し、遂にワールドチャンピオンの座に輝いた。

8名のパイロットが最低1回は表彰台に上り、11名のパイロットが最低1回のトップ5フィニッシュを記録した2009シーズンは、Red Bull Air Race史上最も激しい戦いが展開されたシーズンになった。

 

2010年

2010シーズンは、ポール・ボノムが2度目のワールドチャンピオンを獲得してマイク・マンゴールドの記録に並んだ。ボノムは6戦全てで表彰台に上り、そのうち2戦で優勝した。ライバルのハンネス・アルヒは4戦で優勝していたが、開幕戦アブダビで11位に沈んだことが原因でボノムにポイントで劣り、総合2位で終わった。3位には、2位を3回、4位を3回記録していたボノムと同じ英国人パイロットのナイジェル・ラムが入った。

 

2014年

丸3年の休止期間を経て2014年に再開したRed Bull Air Race World Championshipは生まれ変わっていた。Red Bull Air Race新時代の幕開けとなったこのシーズンから、共通のエンジンとプロペラの使用が義務づけされるなど、様々なルールやレギュレーションが改良された。これまで以上にパイロットのスキルが問われるようになった。この結果、ピート・マクロード、室屋義秀、マルティン・ソンカの3名がそれぞれキャリア初の表彰台を記録することになった。

2014シーズンの開幕直後は2010シーズンの再現のような展開になり、序盤から2度のワールドチャンピオンを誇るポール・ボノムと2009シーズンのワールドチャンピオン、ハンネス・アルヒが再び激しいトップ争いを繰り広げた。しかし、マレーシア・プトラジャヤで開催された第3戦で風向きが変わった。ボノムが予想外の5位に終わり、アルヒも優勝を逃したプトラジャヤを制したのはナイジェル・ラムだった。キャリア初優勝を飾ったラムは、残り全戦で表彰台に上がり、自信と共に総合順位を上げていった。この結果、最終戦シュピールベルク(オーストリア)は、ラム、ボノム、アルヒの3名にタイトル獲得の可能性がある大一番になったが、最後はラムがポイントで上回り、Red Bull Air Race World Championship 2014シーズンのワールドチャンピオンに輝いた。

また、2014シーズンからはチャレンジャーカップもスタートし、全11名のパイロットが参戦した。成績上位6名が進出した一発勝負のファイナルは、現マスタークラスパイロットのペトル・コプシュタインが勝利し、初のチャレンジャーカップを獲得した。また、シーズン終了後に、フアン・ベラルデとフランソワ・ルボットのマスタークラス昇格が発表された。

 

2015年

2015シーズンは英国人パイロットのポール・ボノムとオーストラリア人パイロットのマット・ホールによる激しいタイトル争いが繰り広げられた。ボノムが開幕戦アブダビで通算16勝目を記録し、更にはRed Bull Air Race日本初開催ということから実に12万人の観客が訪れた第2戦千葉も制してスタートダッシュに成功。ホールはシーズン半ばまでボノムを視野に捉え続け、遂に第6戦シュピールベルクでキャリア初優勝を記録して、ボノムに直接プレッシャーをかけることに成功した。尚、シュピールベルクは、カービー・チャンブリスが2010シーズン以来の表彰台を獲得したことも話題になった。

そして、2015シーズンも前シーズンと同じく最終戦で雌雄が決する展開になったが、ラスベガスで開催されたこのレースを制したボノムが3度目のワールドチャンピオンに輝いた。しかし、このシーズンフィナーレは同時にほろ苦いものでもあった:最終戦ラスベガス終了後、10シーズン参戦して通算8勝・ワールドチャンピオン1回を誇っていたRed Bull Air Raceのレジェンド、ピーター・ベゼネイと、ワールドチャンピオン3回獲得などこのスポーツで最も大きな成功を収めてきたパイロット、ポール・ボノムが引退を表明した。

チャレンジャーカップは、フロリアン・ベルガーとフランシス・バロシュが新たに参戦。ミカエル・ブラジョー、ペトル・コプシュタイン、ダニエル・リファ、クリスチャン・ボルトン、ピーター・ポドランセックとテクニックを競い合ったが、ラスベガスで開催されたファイナルを制してチャレンジャーカップを獲得したのは、ミカエル・ブラジョーだった。また、シーズン終了後にチェコ人パイロットのペトル・コプシュタインとスロベニア人パイロットのピーター・ポドランセックが、2016シーズンからマスタークラスに昇格することが発表された。

 

2016年

2016シーズンは複数の点からRed Bull Air Raceの歴史に残る1年になった。まず、マティアス・ドルダラーが、史上初となる1戦を残してのタイトル獲得を決め、ドイツ人初となるワールドチャンピオンに輝いた。

そして、チャレンジャーカップをフロリアン・ベルガーが制したことで、ドイツ人パイロットの両クラス制覇も記録された。尚、この年は、チェコ人パイロットのペトル・コプシュタインとスロベニア人パイロットのピーター・ポドランセックの2人がマスタークラスへ昇格し、トップカテゴリーのパイロットが2年ぶりに久しぶりに増えたことも話題になった。

また、米国のモータースポーツの聖地として知られるインディアナポリス・モーター・スピードウェイでRed Bull Air Raceが初開催されたことと、最終戦ラスベガス終了後に、元ワールドチャンピオンで通算64回出場を誇る英国人パイロットのナイジェル・ラムがトレードマークの白いパイロットグローブを脱いで現役から引退したこともRed Bull Air Race史に残る出来事だった。