ナイジェル・ラム:2017シーズン前半戦総括

混戦となったシーズン前半戦を元ワールドチャンピオンが分析する

Lamb with Brageot

2014シーズンのワールドチャンピオンであるナイジェル・ラムは、自身が昨シーズンまで現役時代を過ごしたBreitling Racing Teamと愛弟子ミカエル・ブラジョーの様子を見るために今もレースハンガーに姿を見せている。ラムがレースエアポートを歩く姿は威厳に満ちており、かつてのライバルたちは彼の姿を認めると挨拶をするために立ち止まり会話を交わしている。

今シーズン開幕前、我々はラムに各パイロットの実力評価と2017シーズンの展望をシリーズ連載『ナイジェル・ラムの眼』で語ってもらった。2017シーズンのRed Bull Air Raceは第5戦カザンからシーズン後半戦に突入しているが、これを機に再びラムに現在のチャンピオンシップへ目を向けてもらい、前半戦の各パイロットのパフォーマンスについて評価してもらった。

「当然ながら、今シーズンここまで楽に過ごせてきたパイロットはひとりもいない。現在チャンピオンシップ上位のパイロットたちでさえ、惨敗と言える内容のレースを1戦以上は経験している」とラムは切り出し、「シーズン折り返しを迎えた現段階でも、チャンピオン獲得の可能性があるパイロットは数多く存在する。タイトルのチャンスは広がっている状態だ。これはチャンピオンシップにとって素晴らしいことだと思う。ここから先は、安定したレースができるかどうかだ。ファイナル4に進出できない時もできるだけ上位でフィニッシュし、全レースで確実にポイントを積み上げていくことが重要だ」と付け加える。

安定したチャンピオンシップの戦い方について、ラムは熟知している。ワールドチャンピオンを獲得した2014シーズン、彼は第3戦マレーシアでシーズン初勝利を挙げたあと、5レース連続で2位に入った。この着実なポイントの積み重ねのおかげで、彼は最終戦シュピールベルクでライバルたちを下してチャンピオンとなった。

「どのパイロットも高い実力を持っているので、その意味では今シーズン私を驚かせたパイロットはいない。ヨシ(室屋義秀)はサンディエゴ・千葉・ブダペストと立て続けに素晴らしい結果を残したが、開幕戦アブダビや第5戦カザンの内容は良くなかった。オーバーGに近すぎる時もある。マルティン・ソンカとピート・マクロードは安定しているが、彼らにもそれぞれ内容の悪いレースがあった。カービー・チャンブリスはブダペストとカザンで2連勝を飾ったが、シーズン序盤は不安定だった」

ラムにとっても、昨年のワールドチャンピオンであるマティアス・ドルダラーの低迷は想定外だったようだ。「マティアスと彼のチームに何が起こっているのかは分からない。昨シーズンの状態を取り戻せないでいる。不調に苦しんでいるはずだが、彼をチャンピオン争いから除外することはできない」

現役時代60戦以上に参戦した大ベテランは、近年チャレンジャークラスから昇格したパイロット6名のパフォーマンスに感銘を受けている。「別にサプライズではないが、ペトル・コプシュタインが非常に順調な成長を見せている。彼には元々才能があり、昨シーズンも何度か良いタイムを記録していた。フアン・ベラルデは時折良いリザルトを手に入れているが、悪いレース内容との差が激しい。ミカエル・ブラジョーは今シーズン少なくとも1回は表彰台フィニッシュができると確信している。そのためには、上手くまとめ上げる必要がある」とラムは説明し、次のように続ける。「ピーター・ポドランセックは第2戦サンディエゴで2位表彰台を記録し、開幕戦アブダビでもクリスチャン・ボルトンがデビュー戦でラウンド・オブ・8に進出する活躍を見せた。知っての通り、レースではほんの少しの要素が大きく結果に反映される。フランソワ・ルボットも新機体を習熟すれば活躍するだろう。マスタークラスパイロット全員が表彰台に立てる実力を持っている」

全パイロットに実力があり、全員が常に成長を続けていると考えているラムはさらに続ける。「マイケル・グーリアンはかなり良い状態にある。ニコラス・イワノフは速いが、好不調の波が大きい。マット・ホールはこれから大活躍する可能性がある。私は、彼が新機体に習熟すれば必ず復活すると随分前に予想していた。彼は表彰台に立つ方法を知っているし、シーズン後半戦は復活の兆しも見えてきている」

Red Bull Air Race World Championship 2017シーズンは全パイロットにレースで優勝できる可能性がある。後半戦に入ったが、ワールドチャンピオンの行方はまだ分からない。残り3戦で獲得可能な最大ポイント数はまだ45ポイントもあり、最終戦まで熾烈なチャンピオン争いが続くだろう。しかし、タイトル獲得に必要なのは才能だけではない。最後にラムは次のようにコメントしている。「勝つためにはギャンブルに出る必要がある。そして多少の運も必要だ。たとえば、ヨシ(室屋)は今シーズン何度か大胆な判断をした。そしてそれが結果に繋がった。だが、そこには運の良さもあった。レースに勝つためには、才能と運を含めた全ての要素が揃う必要がある。スムースかつアグレッシブなフライトと、多少の運が必要だ」