RED BULL AIR RACEを追うフォトグラファーチーム

驚異的な写真を捉えるための撮影方法

Martin Sonka in the Recon Flight

Red Bull Air Raceパイロットとフォトグラファーに与えられた特権のひとつが、レーストラック外のロケーションでクリエイティブな撮影を行うコラボレーションだ。Red Bull Air Raceのフォトグラファーチームをまとめるヨルグ・ミッターが、2018シーズン開幕前にマティアス・ドルダラー、マルティン・ソンカと共にアルプスで撮影に臨んだ際のエピソードを語ってくれた。

Red Bull Air Raceパイロットたちを捉えている空中写真の代表作の中には、レースベニューから離れた場所で撮影された "課外活動" 的なショットも含まれている。このような撮影に臨むパイロットたちは、レーストラックのライバルとパーフェクトに協調して作業に取り組まなければならない上に、フォトグラファーとも密接に協力する必要がある。「全員がリラックスしているので、レーストラック外の撮影は独特なものになります。パイロットたちはレースのことは考えていません」とミッターは語る。

しかし、パイロットたちは、背景と合うフォーメーションについて深く考慮する必要がある。彼らのポジションを指示するのはミッターの役目だ。「かなり入念なプランと知識が必要です。まず、Red Bull Air Raceコミュニケーションチームと意見交換を行い、適した景色を探すことから始まります。次に、アヴィエーションチームがフライト許可を得ます。3番目のステップは、より撮影に関連した作業になります。撮影に最適な時期、高度、ベストフォーメーションなどを決めていくのです」とミッターは説明する。このようなステップを経て、ミッターと彼のチームはストーリーボード(絵コンテ)を制作し、彼らが撮影したいと考えるショットをスケッチに描いていく。「安全が常に最優先です。また、空にいる全員が信頼しあうことが重要です。信頼が深いほど、より良いチームワークと結果が生まれます」とミッターは断言する。

ミッターが最も気に入っている撮影のひとつは、2018年初頭にドイツ最高峰ツークシュピッツェ山と19世紀建造の古城ノイシュバンシュタイン城で行った撮影だ。この撮影には2016シーズンのワールドチャンピオン、マティアス・ドルダラーと2018シーズンに初タイトルを獲得することになるマルティン・ソンカだった。ミッターはこの撮影に向けて「山をどの方角から撮影するか? 逆光で撮るべきか、それとも順光で撮るべきか? ワイドアングルで全体をフレームに入れるべきか、それとも山の特定の部分を捉えるべきか?」などについて考慮することになった。

この特別な撮影セッション中、ミッターは常に2台のカメラボディを携行し、3種類〜4種類の様々なショットを想定していた。「私はマニュアルで撮影しますし、自分が使用するレンズ、ボディ、シャッタースピードは分かっていたので、全てを事前にセッティングしていました」と彼は説明し、さらに続ける。「プロペラの回転効果によって、より魅力的な写真が撮影できます。焦点距離の長いレンズ(望遠レンズ)も使うこともありますが、背景がブレがちですので、プロペラの動きを押さえつつ背景をシャープに捉えるためにはちょっとした調整が必要です。写真全体がブレてしまったら、美しい城を背景にしても意味がないですからね」

ショット数は、その時に彼がどんな画を撮りたいかによって変わってくる。ツークシュピッツェ山のような大きな山は、大きな背景になるのでシャッターチャンスが増えるが、前景となるレース機体と奥に遠く離れた城が正しい位置に来た時にシャッターを押すのは一瞬を狙ったトリッキーな挑戦になる。

ヨルグ・ミッターが世界で撮影したベストショット 

ツークシュピッツェ山では撮影前夜に新雪が降り、また、タンハイムにあるドルダラーのホームエアポートが撮影用基地として提供されたため、チーム全体の雰囲気は最高だった。ミッターは良い1日になる感覚があったとし、「ツークシュピッツェ山は美しかったですし、景色はどこを見渡しても素晴らしいものでした。全員が興奮していましたね」とミッターは回想する。「環境やチーム全体の雰囲気が正しければ、写真にもそれが反映されます」

ミッターはキャリアを通じて約1,000時間のヘリコプター撮影を重ねてきたが、撮影で使用するヘリコプターに関しては、ツークシュピッツェ山での撮影で使用したFlying Bulls(オーストリア)所属のエアロバティックス用ヘリコプターBO105が特にお気に入りだ。ミッターはその理由について次のように語る。「BO105には左右両サイドにスライドドアが備わっています。ヘリコプター撮影では風を正面から受ける時や、フライトが不安定になる時があります。両サイドにスライドドアがあれば、機体を安定させながらパーフェクトな撮影ポイントへ向かえます。これは、焦点距離が非常に長いレンズを遅いシャッタースピードで使用する時には特に重要です」

ヘリコプターパイロットとのコミュニケーションについて、ミッターは次のように説明する。「年月を重ねていく中で、少しずつパイロットの専門用語が分かるようになっています。"こっち / あっち" と伝えるのか、"北 / 南 " と具体的な方角で伝えるのかが大きな違いを生みます。また、"もっと高く" では具体性に欠けますが、"高度を3,000フィート(約914m)上げて" と伝えれば、パイロットは正確に理解してくれます」

もちろん、レース機体を操縦するパイロットとのコミュニケーションも不可欠だ。「通常はレースパイロットと無線通信を交わすことはありません。フォトグラファーがヘリコプターパイロットに伝え、ヘリコプターパイロットがレースパイロットたちに伝えます。近距離でフライトする時は、必要なメッセージをハンドシグナルで視覚的に伝える場合もあります。接近、後退、上昇、下降などは手で伝えます」とミッターは語る。

ミッターが望むショットを正確に撮影するまで、レースパイロットたちは同じルートを通常2〜3回フライトする。「たとえば、1回目のフライトで、ヘリコプターを200フィート(約60m)下げつつ、レース機体を100フィート(約30m)上げるなどの微調整の必要性を見出します。そして次のフライトで、パーフェクトなラインを飛ぶわけですが、レース機体がお互いのスモークで隠れてしまう時があります。この場合は、フォーメーションの間隔を空けたり、少し近づけたり、1機だけポジションを前に出したりと具体的な指示を出して再度フライトを行います。このようにして撮影をまとめていきます」

Red Bull Air Raceの撮影において、フォトグラファーは何から最も大きな満足感を得ているのだろうか? ミッターは「まず、美しいロケーションを空から眺め、素晴らしい人たちと一緒に仕事をするチャンスを得られていることをフォトグラファー全員が光栄に思っています。ですが、結局、私にとって最大のご褒美は、パイロットに『とてもクールな写真だね』と言ってもらうことです。彼らを満足させることが撮影の最終目標です」と締めくくっている。