北米トリオが語るチームワークの重要性

テクニックと運、そしてチームワークが好成績を生み出す

Goulian celebrate with his team

Red Bull Air Race World Championship 2017シーズン第5戦カザンでは、史上初の出来事が2つ起きた。まず1つめはRed Bull Air Raceがロシアで初開催されたこと、そして2つめは北米出身パイロット3人が表彰台を独占したことだ。ロシア初開催となったカザン戦では、1位カービー・チャンブリス、2位ピート・マクロード、3位マイケル・グーリアンの3人が北米出身パイロットの1-2-3フィニッシュを成し遂げた。

シーズン残り3戦の時点で北米出身パイロットがタイトル争いに絡んでいる状況は久々だ。しかも、2人にタイトル獲得の可能性が残っている。ブダペストとカザンで2連勝を飾ったチャンブリスは、自身がタイトルを獲得した2006シーズン以来となる総合首位に立っており、今シーズン急成長を見せるマクロードも総合4位につけている。現在、総合2位の室屋義秀、総合3位のマルティン・ソンカを含めたトップ4は首位から4位まで僅か2ポイント差しかない。9月2日・3日に開催される第6戦ポルト(ポルトガル)では、彼らの間にさらに大きな火花が散ることが予想される。

カザンの決勝レースでこの北米トリオに好結果をもたらした要因は何だったのだろうか? まず考えられるのは、卓越したテクニックと運だろう。しかし、多くのパイロットが強い雨やのしかかるプレッシャーに苦しむシーンが数多く見られたカザン。この難しいコンディションを制して表彰台を獲得した彼らは、テクニックと運の他に、もうひとつ重要な要素があったことを明かす。

「チームワークだ。この要素はとても大きい」とマクロードが切り出す。「今シーズンは多くの面でこれまでと違うやり方を取り入れているが、最大の変化はジェフ・ハックによるデータ分析をはじめとしたチームワークの改善だ。パトリック・フィリップス(テクニシャン)が機体の状態をパーフェクトに維持しているし、シャーロット・サンドガルト(チームコーディネーター)はチーム全体をまとめてくれている。パイロットがレースに集中できる環境ができている。パイロットはベストを尽くして上位を目指すだけだ」

2009シーズン第4戦ブダペスト以来となる表彰台をカザンで獲得したグーリアンは次のように説明する。「Red Bull Air Raceで実際にフライトするのはパイロットだが、チーム全員が一丸となって働かねばならない。スティーブ・ホール(タクティシャン)は有益なデータを地元から送り続けているし、パブロ・ブランコ(チームコーディネーター)は不眠不休で働いている。昨シーズンにウォーレン・シリアーズがテクニシャンとしてチームに加入してから、チームは目覚しい成長を遂げている。非常に素晴らしい状態が続いている」

チャンブリスは9年も勝利から遠ざかっていたが、第4戦ブダペスト・第5戦カザンで2連勝を飾り復活を印象づけた。彼はこの連勝を実現した原動力として、ケイラ・レイトン(チームコーディネーター)やジェイソン・リーソップ(テクニシャン)はもちろん、レースアナリスト兼タクティシャンのパウロ・イスコールドに対する感謝を忘れない。イスコールドは3度のワールドチャンピオン獲得を誇るポール・ボノムのチームに昨シーズンまで在籍していたが、ボノム引退後にチャンブリスのチームへ移籍した。

(↑写真)マクロードの2位表彰台を喜ぶシャーロット・サンドガルトとパトリック・フィリップス ©Armin Walcher/RBAR

「最強のパイロットは最速のパイロットではありません。最も安定しているパイロットなのです」と語るイスコールドは、ボノムをその好例として挙げる。ボノムはいきなり最速タイムを記録するのではなく、セッションを重ねながらタイムを伸ばすことを意識していた。「カービーはポールとは違う性格です。カービーはアグレシッブで常にアドレナリンに突き動かされるタイプなので、その性格を抑えるのにかなり苦労しました。今は良いアプローチでレースに臨めているので、今後もこれを維持していく必要があります」とイスコールドは説明し、「カービーは世界最高のパイロットのひとりですから、彼と同じチームで働けるのは名誉なことです」と続ける。

パイロットたちの好成績を支えるもうひとつの要因は、スポンサーやファンからのサポートだ。カザンでの決勝レース後、チャンブリスとグーリアンは米国ウィスコンシン州オシュコシュで開催されるEAA AirVentureコンベンションで母国のサポーターたちに感謝の気持ちを直接示すために、ロシアを午前2時に出発するフライトに搭乗した。このコンベンションにはマクロードも参加した。

「初めて飛行機でオシュコシュへ向かった時のことを憶えている 。 機内から地上を見下ろせば、1万機もの飛行機が並んでいる」とチャンブリスが語れば、グーリアンは「カザンでの表彰台メンバーでオシュコシュへ向かえたのは感慨深い」と付け加える。「オシュコシュには80万人の航空ショーファンがいる。レースを終えたばかりで疲れていたが、最高の友人のひとり、カービーと同じ表彰台に立てた興奮が背中を押してくれた」

9月2日・3日に開催されるRed Bull Air Race World Championship 2017シーズン第6戦ポルトまであと数週間しかない。ドウロ川に設置される水上レーストラックを飛ぶパイロットたちに自国を思う余裕はないだろう。それぞれが勝利を目指して自分の仕事に集中するはずだ。

「ポルトガルのファンの前でスピードを披露できることを楽しみにしている。もちろん、ライバルたちも同じ思いだろう」とマクロードは締めくくっている。

 

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チャンピオンシップを争いをリードするのは誰か!? 第6戦ポルトは9月2日、3日に開催。Red Bull TVによるライブストリーミングはこちら>>