ブダペスト 予選レポート:今シーズンの行方を左右する分岐点

運がいいのか、悪いのか。

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ第4戦の予選がハンガリーの首都、ブダペストで行われ、室屋義秀はトップのマルティン・ソンカとわずか0.032秒差の2位につけた。

振り返れば、およそ1カ月前に千葉で行われた第3戦、室屋はラウンド・オブ・14でオーバーGを犯して敗退し、チャンピオンシップポイントを獲得できなかった。ポイントランキングは3位につけるものの、同じ36ポイントで並ぶトップのマット・ホールと、2位のマイケル・グーリアンとは17ポイントもの差をつけられている。

 

©️Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 

昨年の世界王者が連覇を成し遂げるためには、残る5戦で17ポイント差をひっくり返さなければならないが、逆襲の狼煙を上げるがごとく、まずは最初のレースで上々のスタートを切った。そう言っていいだろう。室屋が納得の様子で予選のフライトを振り返る。

「(3位の表彰台に立った)昨年のブダペストのレースと同じ感じで落ち着いて飛べているので、非常によかったと思います。フィニッシュしたときは(ソンカのタイムを)まくれたかなと思ったんですけど、ギリギリ届かなかったですね」

ところが、だ。

室屋はせっかく予選を2位で終えたにもかかわらず、翌日のラウンド・オブ・14で対戦することが決まったのは、今年ここまでの3戦ですべて表彰台に立っている、絶好調のグーリアンである。グーリアンが予選1本目でオーバーGによるDNFとなり、13位に沈んだ結果、現在のチャンピオンシップポイントランキング2、3位がいきなり顔を合わせることとなったわけだ。

 

©️Balazs Gardi/Red Bull Content Pool

 

通常、予選で2位につけていれば、ラウンド・オブ・14では比較的楽な相手との対戦が予想される。しかし、室屋の場合、予選を上位で終えながら、不思議と最初から強敵との対戦を迎えることが多い。そんな"引きの弱さ"は以前から目立っていた。

今回も、室屋は自身のフライトを終えて着陸する前に、無線でグーリアンがDNFになったことを聞き、「オーバーGしやがったか、と思いました」と苦笑いを浮かべる。

だが、かつての室屋ならば自らの不運を嘆いていたかもしれない事態も、現在は動じることなく、むしろ歓迎する。なぜなら、ここでグーリアンを叩くことができれば、ポイント差を一気に詰めることができるからだ。もちろん、室屋が勝ってもグーリアンがファステスト・ルーザーで勝ち上がってくる可能性はあり、直接対決の結果がすべてではない。それでも、年間総合優勝の行方を左右する可能性がある重要な分岐点を迎えているのは間違いないだろう。

 

©️Balazs Gardi/Red Bull Content Pool

 

今回の予選を前に室屋は、「仮に自分が残りすべてのレースで優勝したとしても、マットやグーリアンが2、3位に入れば、ポイント差は大きく縮まらない。残り2、3戦になってもあまりポイント差が縮まっていなければ、自分から直接対決に持ち込むことも考えなければいけなくなるだろう」と語っていた。それを思えば室屋にとってこの展開は、まさに「望むところ」であり、幸運が巡ってきたとも言える。

「(上位とのポイント差をつめる)チャンスでしょうね。ここでグーリアンを抑え込むことができれば、シーズンを戦ううえでこちらは落ち着くと思います」

室屋はそう語り、翌日のレースデイに向けて腕を撫す。

しかし、その一方でもしも室屋が敗れるようなら、今シーズンの折り返し地点において早くも絶望的なまでの大差をつけられかねない。それでも室屋は、「もう少しオーバーGのリスクを取れば、もう少しタイムは上がる。そこはかなりマージンを残して飛んでいるので、まだ余裕があります」と、絶対の自信をうかがわせる。

 

©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

天気予報によれば、レースデイのブダペストは最高気温が20度に達するというが、予選日も含めて冷たい風が吹いており、体感気温はずっと低い。観戦に訪れた人たちのなかには厚手の上着を羽織っている人も少なくない。ただでさえ、「昨年のレーストラックとは少しパイロンの配置が変わっていて、より直線的なコースになっている」うえに、「気温が低いので、全体にすごくスピードが速い。3回あるバーティカルターンは、すべてオーバーGのリスクがある状態で飛ぶことになる」と、室屋は言う。

「コース取りはあまり差がないので、3回のバーティカルターンが非常に重要。オーバーGのリスクを取り過ぎることなく、いかにバーティカルターンからリカバリーして加速できるか。そこが勝負のカギになると思います」

いきなりラウンド・オブ・14で実現したグーリアンとの直接対決。果たして運がいいのか、悪いのか。

結論が出るのは、まもなくである。

 

(Report by 浅田真樹)

 

◾️Information

第4選ブダペスト、予選の結果はこちら>>

 

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