第2戦カンヌRACE REPORT:表彰台は逃したものの次戦への展望は良好

室屋義秀が久しぶりに味わう"惨敗"だった。

フランス・カンヌで開かれた、レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ2018の第2戦。室屋は順調にファイナル4まで勝ち上がりながら、勝負のラストフライトで手痛いインコレクトレベルのペナルティを犯し、4位に終わった。しかも、3位のマイケル・グーリアンとのタイム差は2.569秒。ペナルティ加算の2秒がなくても表彰台には届いていない。

ペナルティを犯すことが非常に少なくなった最近の室屋には珍しい負け方であり、これにより、自己最多を更新するはずだった4戦連続の表彰台も逃す結果となった。

©️Daniel Grund/Red Bull Content Pool

ラウンド・オブ・8までは、いつもの"強い室屋"だった。ラウンド・オブ・14では、先に飛んだピート・マクロードが58秒212の好タイムを記録し、プレッシャーがかかるなか、全体3位となる58秒015を記録。同期のライバルを下して勝ち上がると、ラウンド・オブ・8では全体トップとなる57秒374を叩き出し、ミカ・ブラジョーをまったく相手にしなかった。室屋自身、「ラウンド・オブ・8はパーフェクトに飛べた。ベストラインでベストタイム。このタイムなら(優勝まで)行けるだろうと思った」と振り返る。

室屋が前日の予選後に話していた"秘策"も、確実に効果を発揮していた。室屋が「意外なところにある」と漏らした勝負のポイントの正体とは、ゲート2。「ちょっとしたGのかけ方と、ターンの旋回率のコントロールの違いだけですが、それで結構タイムが変わってくる。Gをかけすぎれば当然スピードは落ちるし、かけなければ曲がれない。ちょうどその間を取るような感じで、Gをかけすぎないようにジワーっと曲がっていくと、スピードを落とさずシケインに入ることができる」と室屋。「そこを予選と変えたことによって、タイムも上がっていた」という。

事実、室屋がラウンド・オブ・8で記録した57秒374は、今回のレースデイでのすべてラウンドを通じて最速のタイムだった。最近の室屋の安定度を考えれば、もはや表彰台は間違いなし。焦点は、今季初優勝がなるかどうかだけかに思われた。

ところが、終わってみれば優勝どころか、表彰台も逃す4位。ファイナル4で室屋にいったい何が起こったのか。

©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

「完全に無警戒でしたね」

室屋が無念の様子でそう評したのは、陸側からの風。それもゲート8付近にのみ、突然吹き込んでくるいたずらな風だった。室屋が続ける。

「ピートがラウンド・オブ・8でまったく同じ状況になり、パイロンヒットしましたが、今回のレーストラックはほとんど風がなかったのに、ゲート8の1カ所だけ急に風が入ってくることがありました。でも、ラウンド・オブ・8に入ってしまうと、僕はもちろん、スタッフも含めて自分たちの準備があるので、他のパイロットのフライトは見ていない。もしその可能性を意識していれば対応できたかもしれませんが、全体的には風がなく、海面を見ても波は立っていなかったので......、それは難しかった」

シングルパイロンを右旋回で抜けた室屋はゲート8を目前に、進入ラインがズレているのに気づいた。どうにか機体を傾けてパイロンヒットは回避したものの、しかし、インコレクトレベルのペナルティ。加えて、機体が傾いたままバーティカルターンに入ったため、想定とはまったく違う方向へ上昇してしまい、「それだけで0.7秒くらいは遅れてしまった」

©️Mihai Stetcu/Red Bull Content Pool

しかも、そこに風が吹いているという意識がまったくなかったため、「2周目のバーティカルターンでもまったく同じことをしてしまった」。これこそが、ペナルティによるタイム加算を除いてもなお、他に大きく後れを取った理由である。室屋が少しばかり表情をこわばらせて語る。

「1周目で(風があることを)分かっていたはずだから、2周目は防げたと言われても仕方がない。でも、レースはそのまま続いているので......、そこに気づけるだけの余裕があれば防げたんでしょうが......」

そして、室屋はひと呼吸おいて、「いい教訓にはなったが、勝てるレースだったのでもったいなかった」とつぶやいた。

確かに、ラウンド・オブ・8までの流れを考えれば、もったいないレースではあった。とはいえ、今年の室屋が目標とする「すべてのレースで安定して上位に進出する」という点で言えば、決して悪いレースではなかった。チーム・ファルケンのタクティシャン、ベンジャミン・フリーラブも、「ファイナル4ではたまたまトリッキーな風に見舞われたが、機体もパイロットもよかった。まったく問題はない」と、今回の結果を気にする様子はない。

©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

フリーラブが言うように、幸いにして、大掛かりな改造が施された機体の調子は上々。室屋は「今日も3回レーストラックを飛ぶことができ、特にラウンド・オブ・8はきれいなラインであれだけのタイムが出せたので、機体の性能評価もしやすい。これから1週間くらいかけてデータ解析することになりますが、少なくともいい方向へ行っているのは間違いない」と話し、頬を緩める。

この後、機体は5月26、27日に千葉で開かれる第3戦へ向け、室屋の活動拠点であるふくしまスカイパークへ送られ、勝手知ったる我が家でテストとトレーニングを重ねることになる。バージョンアップされた機体は、そこで性能を最大限に引き出され、室屋の手の内へと入るはずだ。「去年より厳しい。今年のチャンピオンシップは混戦になりそう」と口にしながらも、どこか楽しげな室屋の様子がフリーラブの言葉を裏づける。

「チャンピオンシップポイントランキング3位といっても、1位とはまだ5ポイント差。そんなに差があるわけではない。去年は第2戦で優勝しているので、見ている人はまだ優勝がないことにもどかしく思われるかもしれませんが、自分自身としては2戦連続のファイナル4進出は悪くないし、いい位置につけられていると思っています」

©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

次回、千葉での第3戦は世界チャンピオンの凱旋レースであり、しかも同一会場での3連覇がかかる。恐らく過去3年のレース以上に、室屋には大きな期待と注目が集まるに違いない。

だが、今の室屋ならそのプレッシャーに押しつぶされることはないだろう。もちろん、優勝を断言することなどできないが、間違いなく王者の風格漂うフライトを見せてくれるはずである。

 

(Report by 浅田真樹)

 

■Information
第2戦カンヌ 予選レポートはこちら>>
マスタークラスの結果とパイロットのコメントはこちら>>

 

Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool
Anthony Pecchi / Red Bull Content Pool
Joerg Mitter / Red Bull Content Pool
Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool
Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool