第8戦フォートワース RACE REPORT:来季への手応えを感じた納得のフライト

レースを終え、ハンガーのバックヤードから姿を現した室屋義秀は笑顔だった。それも、ラウンド・オブ・8敗退という結果とはまるで釣り合わないほどの、すがすがしい笑顔である。

「満足感のあるレースができましたね。感覚的にも、今日(のラウンド・オブ・8)はベストフライトに近いんじゃないかな」

そう言うと、室屋は充実の50数秒間をかみしめるように、うんうんと何度もうなずいた。

 

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©️Sebastian Marko/Red Bull Content Pool

 

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップの2018年最終戦。室屋は、ラウンド・オブ・8でカービー・チャンブリスに敗れ、5位という成績でシーズン締めくくりのレースを終えていた。

ラウンド・オブ・14では、先に飛んだペトル・コプシュタインがパイロンヒットを犯したこともあり、「かなりペースを落として飛んだ」が、それでも「すべてをほぼ完璧にコントロールできた」というフライトは、53秒724という全体で5番目のタイムを記録した。

悠々とラウンド・オブ・8へ勝ち上がった室屋は、そこでもまた、会心のフライトを披露。ラウンド・オブ・14から1秒以上もタイムを縮める、52秒519でフィニッシュゲートに飛び込んだ。

 

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©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

「ほぼ完璧なフライト。絶対に勝ったと思いました。僕らの計算では、あれ以上のタイムを出そうとすれば、たぶん(バーティカルターンで)オーバーGか、(ハイGターンの手前で)パイロンヒットか、どちらかになるはずでした」

ところが、あとから飛んだ対戦相手のチャンブリスが、51秒984という驚愕のタイムを叩き出す。「あのタイムを超えられたのでは、もう笑うしかなかった」。室屋は悔しさを通り越し、あきれ顔で振り返る。

「あれはお見事と言うしかない。すべてのセクターを限界ギリギリで通過し、操縦を1ミリでも間違えたらアウトというようなフライトでしたからね」

ある意味で、今シーズンの悪い流れがここに極まったかのような結末である。

 

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©️Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 

室屋のタイムは、ラウンド・オブ・8全体で2番目の記録。つまり、室屋を上回っていたのは、チャンブリスただひとりである。室屋が記録した52秒519は、本来なら楽々とファイナル4へ進出していても不思議のないタイムだったのだ。

にもかかわらず、組み合わせの妙によって勝ち上がりを阻まれ、ラウンド・オブ・8敗退に終わったのである。
「今日はラウンド・オブ・14から、フライトの出来は抜群によかったのに......、今年の運はこんな感じなんでしょうね」

室屋がそう言って嘆くのも無理はない。

しかし、それでも室屋がすがすがしい笑顔で最終戦を終えられたのは、冒頭のコメントにもあるように「満足感のあるレースができた」という手応えがあるからだ。室屋は前日の予選を終え、「もちろん勝ちに行くが、負けても満足感のあるレースができたらいい」と話していたが、まさに有言実行の結果を残したと言えるだろう。

 

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©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

思えば、今年の室屋は消化不良のレースを強いられ続けてきた。

第3、4戦では、2戦連続でオーバーGによるDNFでのラウンド・オブ・14敗退。続く第5戦では、オーバーRPMによるDQでラウンド・オブ・8敗退に終わっている。負けた気がしないどころか、飛んだ気がしない。そんなレースばかりが続いた。

だからこそ、勝ち負け以前に、納得できるレースがしたかった。

もちろん、今シーズンを通して振り返れば、室屋は不運だけで負けていたわけではない。昨年の世界チャンピオンも、今年の年間総合順位は5位。そこに反省すべき点は数多い。

「今年は、今日のようなフライトがコンスタントにできなかったのは事実。技術的な課題もあるし、勝負には流れがあるので、勝負運をどう作っていくかということも課題です」

だが、室屋の戦いは、今年で完結するわけではない。来年以降もまだまだ続く。自身が「(昨年、年間総合優勝して)勝った後の難しさも味わったし、フライトだけでなく、日々の生活も含めて、今シーズンの経験はいい人生勉強だったと思います」と話しているように、重要なのは、いかに今年の負けを次に生かすか、である。

 

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©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

その意味では、今年最後のレースをすっきりとした笑顔で終われたことは、来年へつながる大きな収穫となるはずだ。室屋は「(ラウンド・オブ・8で)負けてしまいましたけど、(今シーズンの)いい締めくくりだったと思います」と言い、こう続ける。

「第7戦が終わって新しくエンジンを入れ替えた機体も、スピードが出ているし、うまくセットアップできていることが分かった。これなら安心して来年の開幕戦に臨めます。だからホント、今日はいい手応えでしたね」

今シーズン、ずっと苦しめられてきた憑き物がようやく落ちたかのように、すっきりとした表情で話し続ける室屋。とはいえ、結果はあくまでもラウンド・オブ・8敗退である。

すると、最後に少し、ほんの少しだけ、言葉に悔しさがにじんだ。

「でも......、やっぱりファイナル4へ行きたかった。今日の出来だったら、勝っていたんじゃないかと思うんですけどね」

これもまた、来る新しいシーズンへのエネルギーである。

 

(Report by 浅田真樹)

 

■Information

第8戦フォートワース 予選レポートはこちら>>

マスタークラスの最終結果はこちら>>

決勝後のパイロットのコメントはこちら>>

 

 

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©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

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©️Mihai Stetcu/Red Bull Content Pool

 

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©️Sebastian Marko/Red Bull Content Pool

 

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©️Mihai Stetcu/Red Bull Content Pool

 

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©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

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©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool