FEEL THE AIR@インディアナポリス:新たな歴史を刻んだ聖地

現地に行ったつもりになれるエアレース旅行記

すでに開催が100回を超える(つまり、100年以上の歴史を誇る)インディ500をはじめ、数々のメジャーモータースポーツが開かれてきたインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(以下、IMS)。そんな"モータースポーツの聖地"を抱える、アメリカ・インディアナ州の州都インディアナポリスは、空港から早くも"モータースポーツ押し"が強烈だ。

搭乗ゲートをつなぐコンコース上にはレーシングカーが展示され、チェックインロビーにはレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ開催に合わせて、こちらもまた(レース機ではないものの)実機の展示が。空港内はレストランといい、カフェといい、モータースポーツをモチーフにした施設ばかりだ。

 

インディアナポリスの玄関口がこんな様子なのだから、IMSの周辺はさらにモータースポーツ熱が高まる。IMSの正面につながる、その名もメインストリート(Main St.)の壁には、ここへやってくる世界中のモータースポーツファンを歓迎するメッセージボードがズラリと並んでいる。

 

メインストリートを抜けた先にあるのが、IMSの正面ゲート(第1ゲート)。

 

正面ゲートの目の前には大きなラウンドアバウト(信号がなく、旋回して進む交差点)があり、その中央部分にもIMSのロゴマークが堂々と設置されている。とにもかくにも、このあたりはIMS一色だ。

 

メインストリートにはレストランやバーも立ち並び、夜になるとレース観戦を終えたお客さんたちの「レース談義」でにぎわう。POPがエアレースバージョンになっているレストランも。

 

クラフトビールメーカー直営のレストランもいくつかあり、なかには、レース用のヘルメットをモチーフにしたロゴのブリュワリーもあった。

 

さて、IMSの中に足を踏み入れてみると、やはり目を引くのは通称「パゴダ(仏塔の意)」で知られるコントロールタワー。元々、日本の寺の四重の塔をモチーフに建てられ、歴史とともにモダンなデザインに変化してきたものだ(現行バージョンは"五重の塔"になっているが)。

 

その一階部分の壁には、今年5月にここで開催されたインディ500で初優勝した佐藤琢磨さんの写真が飾られていた。日本人としては、何だか誇らしい気分になる。

 

IMSで開かれるレッドブル・エアレースでは、ハンガービューエリアにベンチが設けられ、のんびりしながらハンガーの様子を眺められるのが"名物"だ。他のレース会場でも、一般客席とは別にハンガービューエリアが用意されるのは珍しくないが、ベンチが置かれ、ドリンクを売るカウンター(ビールやカクテルなども売っている)まであるのは、ここくらいのものだ。

 

レース前から上空では、様々なサイドアクトが行われる。

 

ハンガービューエリアから見ていると、みんなが同じ体勢に。

 

今回のレースでは、先に紹介した佐藤琢磨さんがチーム・ファルケンのハンガーを訪れ、年間総合優勝を狙う室屋義秀を激励。まさに"時の人"の来訪とあって、日本メディアはもちろん、地元メディアも集まり、ハンガー前は大賑わいになっていた。

 

さて、スタンドの外も少し散策してみよう。

レッドブル・エアレースが行われる会場では、レース以外にも楽しめる様々なアトラクションが行われるのが恒例だが、特に今回はいつも以上に豪華で盛りだくさん。かなりの充実ぶりだと実感した。

まずはドローンの実演。

 

救助用のヘリコプターが展示され、実際に乗ってみることもできた。

 

レッドブル・エアレースのモバイルゲームを体験できるコーナーは、セットやスタッフも含めて、パイロット気分を味わえる本格的な(?)ものだった。

 

なかでもひと際目立つ大行列ができ、一番人気になっていたのが、2012年10月に行われた、成層圏からのフリーフォールに挑戦するという壮大なプロジェクト、「Red Bull STRATOS」を紹介するブース。なかなか目にできない貴重な品が展示されているとあって、大人気だった。

 

フリーフォールを行ったフェリックス・バウムガートナーが実際に着用した装備。

 

フリーフォール開始地点(約127,000フィート)まで上昇するときに使用したカプセル。

 

音速を超えるスピードでのフリーフォールに成功したバウムガートナー(左)、このプロジェクトでバウムガートナーのパートナーを務めたジョー・キッティンガー(右)のサイン会も行われていた。

 

さらに会場を進めば、今度はレッドブル・アスリートたちがずらりと並んでサイン会。一番手前で笑顔を見せてくれたのは、フリースタイル・モーターバイクのアーロン・コルトンだ。もちろん、サイン会だけでなく、すぐ隣で彼らのパフォーマンスも披露された。

 

世界中からモータースポーツファンが集まるIMSは、グッズショップも充実。大きなテントのなかで品ぞろえ豊富なオフィシャルグッズを見ていると、目移りしてしまう。

 

IMSでのレッドブル・エアレースといえば、ここだけのオリジナルTシャツが人気(中央)。昨年は期間中に完売してしまっていたが、果たして今年は?

 

昨年バージョンのTシャツを着ているファンの姿もちらほら。

 

小さな子供が遊べる施設も驚くほど充実している。これなら家族連れが多いのもうなずける。

 

ドリンクの売り場には、蝶ネクタイ姿のバーテンさんがスタンバイ。レッドブルを使ったカクテルなんかも楽しめる。

 

とにかく広大な施設だけに、グルっと見て回るだけでも一苦労。あそこへ行きたいけれど場所が分からないなんてときは、会場内にいくつかある案内所(Q & A Zone)へ駈け込めば、親切に教えてくれる。もちろん、ここに紹介していないアトラクションが他にもたくさんあった。

 

だがしかし、だ。

気持ちよく会場をぶらぶらできたのは、予選が行われた土曜日だけ。まぶしいほどに強い日差しが照りつけた土曜日から一転、本選の日曜日は朝からあいにくの雨となってしまった。

土曜日は青空も見え、こんな感じだったのに。

 

日曜日はこの通り。

 

ファンサービスのためにハンガービューエリアに出てきたパイロットたちも、傘をさしての臨時サイン会。

 

パイロンや機体が地面の水たまりに映るほど雨が降り、ラウンド・オブ・14の開始が遅れた。

 

とはいえ、早朝は窓を叩く雨の音で目が覚めてしまうほど、激しい風雨だったことを考えれば、今季最終戦がキャンセルにならずに済んだのは不幸中の幸いだったのかもしれない。

チャレンジャークラスは予選のみの開催で本選はキャンセルになってしまったが、メラニー・アストルが女性パイロットとして初優勝(予選トップ)。

 

また、マスタークラスでは室屋が優勝し、チャンピオンシップポイントランキングでもトップに立って年間総合優勝を果たした。日本のエアレースファンにとっては、この日の雨は"うれし涙雨"だったわけだ。

ここIMSでは、インディ500の優勝者がレーストラックの一部に残るレンガ部分にキスをする、「ブリック・キス」が恒例の儀式となっているが、レッドブル・エアレースでもこれに倣っている。すでに室屋がコースにひざまずき、レンガにキスをするシーンを写真などで目にした人は多いだろう。

だが、室屋がそこへやってくる前、先にコースに運びこまれた室屋の愛機、エッジ540 V3が主人を待つ姿もまた、どこか誇らしげでなかなか印象的だった。

 

最後はチーム・ファルケン全員で記念撮影。日本のレッドブル・エアレース・ファンにとってIMSは、記念の場所として長く記憶に残ることになるのだろう。

 

IMSに併設されているミュージアムには、ここで開かれた様々なメージャーイベント優勝者の写真が展示されている。来年には、室屋もそのひとりに加わる予定だ(昨年優勝したマティアス・ドルダラーは、すでに展示されている)。もしも来年もまた、ここでレッドブル・エアレースが開催されるなら、ぜひとも数々のレジェンドたちと並ぶ室屋の顔を見てみたいものだ。

このころにはすっかり雨も上がり、地面も乾いていた。時折吹き込む風が冷たく、それほど寒さ対策をしていない身には震えるほど寒かったが、そこにいる誰もがみな笑顔だった。

 

 

(Report by 浅田真樹)

 

■Information

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