FEEL THE AIR@ポルト:街中が人で溢れかえった絶景の都市

現地に行ったつもりになれるエアレース旅行記

 

ポルトガル第二の都市、ポルトは美しい港町だ。

このところ、3年連続でレッドブル・エアレースが開催されるハンガリーの首都ブダペストは、訪れる度にその美しさに思わずため息を漏らしてしまう街並みだが、ここポルトも負けてはいない。

 

レーストラックは街の中心部を流れるドウロ川上に設置され、オレンジ色の屋根瓦の建物が立ち並ぶ景色を背景にすれば、どこを切り取っても絵にならないはずがない。

しかも、川幅は狭く、パイロンまでの距離が短いだけでなく、水面と川岸との間に高低差があるため、あたかもレース機が目の高さを飛んでいるかのような迫力が感じられる。

いつになく機体が大きく見えるのも、決して気の持ちようだけが理由ではないだろう。

 

パイロンヒットの修理に備え、レーストラック脇で待機するエアゲーターも、いつもに比べて、ずいぶんと近場で出番を待っている。この距離なら破れたパイロンまでたどり着くまで、あっという間だ。

 

ポルトでレッドブル・エアレースが開催されるのは8年ぶりとあって、街の盛り上がりは想像を絶するものがあった。

レース会場の周囲はかなり大規模な交通規制がなされ、自動車はドウロ川に近づくことができない。こんなに規制してしまっては、逆に不便なのではないだろうかと想像したが、そんな心配はまったくの余計なお世話だった。

 

首都リスボンに次ぐ第二の都市とはいえ、ポルトの人口およそ26万人。決して巨大な都市ではない。ところが、いったいどこから集まってきたのかと思うほど、レース会場周辺は移動が大変なほどの人が集まっていた。

 

川岸に設けられた"屋台村"のような施設は、まさに大・大・大盛況。

 

ビールにホットドッグ、ハンバーガーにアイスクリームと、より取り見取りの出店には、どこも長蛇の列ができていた。

 

そんななか、ビールやソフトドリンクだけでなく、ワインの人気が高かったのはポルトガルならではだろう。ポルトはポートワインが名産品であり、ドウロ川の川岸にも多くのポートワインメーカーの施設があり、ワインとともに食事を楽しめたり、様々なワインを試飲できたりと、ワイン好きにはたまらない。

 

混雑していたのは、最も臨場感あふれるレース観戦ができる川岸だけではない。ドウロ川を挟んだ両岸は崖のようにそりたっており、その高台にある公園などは絶好の観戦ポイントになっていた。

 

特別に広い場所でなくても、ちょっとしたスペースがあれば、飲み物や食べ物持参で集まった人たちで大賑わい。

 

歩道でさえも、十分な観戦場所となる。

 

ただし、高台の観戦スペースにたどり着くためには、ちょっとした苦労がともなうことを覚悟しておかなければならない。ひょっとして垂直なのでは? と疑いたくなるくらい、かなり急な階段や坂を上る必要がある。

 

ちなみに、高台の公園からのながめはこんな感じ。川岸に比べれば、少し距離は離れるが、トラック全体が見やすく、飛行機の挙動もよく分かる。これはこれで、おもしろい。

 

川岸の急坂に沿って建っている家では、自宅がそのまま特等席のだからうらやましい。

 

とはいえ、盛り上がっていたのは、レース会場だけではない。ポルトの中心部から西へ車で20分ほど走ったところに設置されたレースエアポートもまた、"異常な"盛り上がりを見せていた。

他のレッドブル・エアレース開催都市ではあまり見かけない、珍しいイベントだったのは「レースエアポート・ビレッジ」なるファンゾーン。

 

レースエアポートに隣接した広場に設けられており、誰でも自由に出入りすることができる。レースのパブリックビューイングはもちろんのこと、大人から子供まで楽しめる様々なイベントが用意されていた。

 

3Dのゴーグルをつけるだけではなく、体全体が前後左右、さらには上下にも動き、ヴァーチャルの空中体験ができるアトラクションには特に長い列ができていた。

 

また、エアレースならではだったのが、エアゲーターのパイロン交換を疑似体験できる、ジッピング・チャレンジ。ファスナーで組み合わされている実際のパイロンさながらの"レプリカ"をすばやくパーツ交換し、エアゲーター気分が味わえる。

 

ハンガーの様子も目の前で見ることができるレースエアポート・ビレッジには、常に多く人が集まっていたのだが、最高潮を迎えたのが、予選前日の夕方のこと。ハンガーでパイロットたちのオートグラフ・セッションが開かれるとあって多くの人たちが詰めかけ、今か今かとスタートを待っていた。

この日のオートグラフ・セッションの盛り上がりは今年6月の千葉をもしのぐほどで、ポルトガルの大手スポーツ紙「O JOGO」でも取り上げられていた。ちなみに同紙では予選、本選も見開きを使って大きく報じられており、なかなかの好待遇だった。

 

ただ、少々残念だったのは、このレースエアポートは誰もが訪れやすい比較的町中に作られていたため、施設はかなりコンパクト。その結果、滑走路の短さが災いし、レース機の着陸時にトラブルが頻発してしまった。あえなくレースエアポートは予選後に別会場に変更となってしまい、日曜日の朝にはどのハンガーももぬけの殻になってしまった。

 

時折、海から入り込む濃い霧が立ち込めるなか、前日にプロペラを滑走路にこするアクシデントに見舞われたフアン・ベラルデの機体だけが、寂しげに修理のためにとどまるのみだった(結果的に、ベラルデが欠場になってしまったのもかわいそうだった)。

 

最後にもう一度、レース会場に話を戻そう。

川岸に立錐の余地もないほどの人が集まった結果、レース終了後はどうなるか。当然、街の中心部へ向かう道は自分のペースで歩くのが難しくなるほどの人で覆いつくされる。

 

だが、幸いにして周辺は車両通行止めになっているため、広い道路も歩行者専用。将棋倒しなどが起こる心配もなく、白熱したレースの余韻を味わいながら人の波に乗っていれば、混雑もそれほど気にならない。途中のカフェで一息ついてもいいだろう。

ポルトの観光名所として知られるサンベント駅周辺も、レース観戦を終えた人たちで、こんな有様になっていた。

 前回のカザンでも、思わず「スゴいな」と声が出てしまうほど、レッドブル・エアレースの会場は人、人、人の大盛況だったが、今回のポルトは、それをはるかにしのぐ盛り上がりを見せていた。

 

8年ぶりにポルトで開催されたレッドブル・エアレース。長い間待ちに待ったその瞬間の訪れに、ポルトの人たちの喜びは爆発した。

そんな表現が少しも大袈裟でないほどに、レース会場もレースエアポートも、とにかく数えきれないほどの人で溢れかえっていた。

いやはや、ポルト恐るべし、である。

 

【Information】

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