Gフォースとの戦い

パイロットたちがGフォース耐性を得るためのトレーニングについて語った

Chambliss pulling the high-Gs

どのスポーツを選ぶにせよ、プロフェッショナルなアスリートになるには献身が必要となり、その中のトップを目指すなら膨大な時間をトレーニングに費やさなければならない。しかも、トレーニングは1種類ではない。ジムワーク、有酸素トレーニング、健康的な食習慣など、どんなアスリートにも途方もないフィットネススケジュールが課される。Red Bull Air Raceのパイロットたちも例外ではなく、彼らにはメンタル/フィジカル両面での強靭さが求められるのはもちろん、他のどのアスリートも経験しない強烈なGフォースに直面しなければならない。高いGフォース耐性はパイロットの必須条件なのだ。

一般人の多くは、旅客機の離陸時にGフォースを体験している。また、車でカーブを高速で通過する時にもGフォースを弱冠感じている。しかし、パイロットが体験するGフォースは、重力の10倍(10G)にも及ぶ。「自分の胸に家一軒が乗っているような感覚で、頭から血液が全て抜けてしまうようだ」と語るのは米国人パイロット、カービー・チャンブリスだ。

チャンブリスと同じ米国出身のマイケル・グーリアンも同意し、「(Gフォースは)コックピットに潜む敵だ。パイロットを快適な状態から遠ざける。自分たちをシートに押し付け、スロットルから手を引き離そうとする。常にGフォースと戦う必要がある」としている。

グーリアンは、パイロットがGフォースに抗う方法は2つしかないとし、「まずはウエイトリフティング。これは筋力強化のためだ。あとは、フライトを重ねてGフォースへの許容力を少しずつ高めていくことだ」と続ける。

 

他のスポーツとは異なり、Gフォース耐性は実際にフライトすることでしか鍛えられない(NASAで訓練を受けた経験がある、または自宅にGフォースシミュレーターがある場合は別だが)。グーリアンは「フライトを重ねるのは効果的だが、他のスポーツと同じで、身体を鍛えなければ許容力は失われてしまう」と付け加えている。

レースに向けた準備で、グーリアンが最初に取り組むのが耐Gフォーストレーニングだ。「意図的にGフォースをかけて、身体がシャットダウンする直前、視界が暗くなり始めるのを待つ。そして、そのような感覚が生まれた瞬間にターンをやめる。こうすると首の後ろの筋肉が緊張するので、Gフォース耐性が得られるようになる」

マット・ホールもグーリアンに似たアプローチを用いているが、ホールの場合は空軍在籍時に学んだ方法を取り入れている。「Gウォームと呼ばれる方法だ」とホールは語る。「身体を一切緊張させない状態で5Gターンを維持して、グレイアウト(高いGフォースで心臓より上にある脳に血液が供給できなくなり、視界の色調が失われる症状。ブラックアウトの前段階)が始まるとターンをやめる。血圧が低下するが、身体に何が起きているかを脳が認識すると心拍数が上昇して、下がった血圧を元に戻そうとする。これで少なくとも1時間は、Gフォース耐性が得られる。身体の仕組みを上手く利用している方法だ」と彼は説明する。

また、ホールは耐Gフォース能力の向上に役立つ他のトレーニングも取り入れている。「体幹の強さが重要なので、ピラティスを積極的に取り入れている。頭部から足に向かって血液が流れ込むのを抑えるために大腿部やふくらはぎの筋力強化が必要なことはあまり知られていない」とホールは語る。

 

Red Bull Air Raceのレーストラックによっては、パイロットたちは最大3カ所のハイGターンに挑まなければならない。また、各ターンは約3秒も続く。これらのターンにパイロットたちがどう立ち向かっているのかについて、ホールは次のように説明する。「ターンに進入する直前、パイロットは深呼吸をして、息を止める。そして、下半身の筋肉を緊張させて横隔膜を下げ、血液が足先に落ちないように留める」

マイケル・グーリアンも同様のテクニックを使用しており、「ターン中に筋肉の緊張を保ったまま、クイックで1回呼吸する。こうすることで血流が維持できる。また、自分が万全の状態かどうかをチェックできる」と説明する。

カービー・チャンブリスも「他のスポーツと同じで、とにかく鍛えるしかない。機体に乗り込んでGフォースを感じるしかない」と2人に同意している。

 

■Information

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