フォートワース 予選レポート:タイムを縮められる余地あり 最後まで勝ちに行く 

率直に言って、予選前に行われるフリープラクティスは不安を感じさせるものだった。

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップではレース前の公式練習として、予選前日に2回、予選当日に1回、フリープラクティスが行われ、パイロットたちは実際のレーストラックを飛ぶことができる。

それはパイロットにとって、その名の通り、あくまでもプラクティス(練習)である。様々なラインを試しに飛んでみる貴重な機会となり、当然、そこでのタイムや順位に必ずしも大きな意味があるわけではない。そこで得られたデータを分析し、レースに生かすことこそが重要なのだ。

とはいえ、それがパイロットや機体の調子を少なからずうかがうことのできる機会となりうることも、また疑いようのない事実である。

 

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©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

アメリカのフォートワースで行われている、今季最終戦。予選前日のフリープラクティスで、室屋義秀は惨憺たる出来に終わっていた。フライト中の機体に無駄な動きが多く、明らかに狙ったコースを飛べていない。いかに練習機会とはいえ、少々心配になるほど室屋のフライトは荒れていた。

「ちょっとバタバタでしたね。1回目のバーティカルターンのときに、ちょっと首を痛めて、そこからいまいちレースに入り切れていない感じがありました」

この日のレーストラックには強い風が吹き込み、パイロットたちがペナルティ覚悟で様々なラインを試すフリープラクティスだとしても、あまりにパイロンヒットが頻発していた。もちろん、室屋のフライトにも、強風の影響はあっただろう。だが、当の本人が「それにしてもバタついていました」と、荒れた原因が自分自身にあったことを認める。

 

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©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

果たしてフリープラクティスの順位は、1回目が12位、2回目が13位。昨年の世界王者はまったく精彩を欠いていた。

すでに先月行われた第7戦の結果により、室屋の年間総合での優勝はおろか、表彰台に立つ可能性も消滅した。連覇を狙ったディフェンディングチャンピオンに、ショックがなかったわけではないだろう。メンタルトレーニングに力を入れ、世界の頂点に立った室屋と言えども、緊張の糸が切れてしまったのか――。そんな不安を感じさせる、予選前日だったのだ。

そして迎えた予選当日。首の状態も心配された室屋は、しかし、さすがは昨年の世界王者という実力を示して見せた。

予選前に行われたフリープラクティス3では、きっちりとフライトを修正し、フリープラクティス全体で3位となるタイムを記録。予選でも、「途中から風の状態が変わって、トラックタイムがガクンと落ちた。早い順番で飛んだパイロットのほうが有利な条件だった」というが、そのなかでも室屋は51秒571のタイムを記録し、7位に入った。

 

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©️Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 

特に「ウインドシア(急な風の変化)でストール(失速)して、そこで完全にスピードが死んじゃったので、加速しないままフライトが終わってしまった感じだった」という予選1本目は、ノーペナルティにもかかわらず、53秒061に終わっていた。そのため2本目は、「1本目のタイムを聞いたら、ビックリするほど遅かったので、無難にいっても勝負にならないと思い、タイムを出すために手堅いラインをあまり変えすぎない範囲で少し攻めに出ました」

単純に数字だけを見れば、予選7位という順位は、2戦前には予選トップに立っている室屋がそうそう喜べるものではない。だが、「あのコンディションのなかで、このフライトとこのタイムなら悪くない」と室屋。「昨日はフライトのクオリティが低かったけれど、今日はフリープラクティス3からずっと落ち着いているので、いい状態だと思います」と、納得の様子で語る。

幸いにして、首のケガも「多少かばいながらの感じはあるけれど、僕も過去に3、4回やっているし、他のパイロットも結構やっている。特別なことではないので、大丈夫」だという。

 

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©️Sebastian Marko/Red Bull Content Pool

 

そして室屋は、決して緊張の糸が切れたりはしていないと反論するかのように、翌日のレースデイに向けて、力強く言葉をつなぐ。

「僕はまだコンマ4、5秒は縮められる余地があるし、逆に(予選で)速かった人は、レースではあそこまでギリギリの勝負はできないと思うので、ファイナル4で実力勝負ができたらおもしろくなるんじゃないかな」

振り返れば、室屋は2015年の第7戦、すなわち、今回と同じテキサス・モーター・スピードウェイで開かれたレースで3位となり、自身初となる1シーズン2度目の表彰台に立っている。室屋にとっては、ゲンのいい会場だと言えるだろう。

「昔のことだから、もう忘れちゃった。そういえばそうだったっけ? みたいな感じです。もちろん勝ちに行きますけど、(今年第6戦で2位になった)ウィナー・ノイシュタットのときみたいに、ベストレースができれば、負けても結構満足感がある。今シーズンの最後に、ああいうレースができたらいいと思います」

冗談めかしてはぐらかす室屋からは、前日にはなかった余裕がうかがえた。

 

(Report by 浅田真樹)

 

■Information

第8戦フォートワース、予選の結果はこちら>>

 

 

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©️Sebastian Marko/Red Bull Content Pool

 

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©️Mihai Stetcu/Red Bull Content Pool

 

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©️Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 

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©️Samo Vidic/Red Bull Content Pool

 

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©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool