カンヌ:初開催までの道のり

Red Bull Air Raceのイベントプロダクション部門がカンヌ初開催までの過程を明かす

Red Bull Air Race Airgators

Red Bull Air Raceを一度もホストした経験がないロケーションで究極の三次元モータースポーツを開催するためには、どのような作業が必要になるのだろうか? 4月20日〜22日のフランス・カンヌ初開催を前に、Red Bull Air Raceのイベントプロダクション部門がこれまでの舞台裏を外部に明かした。

2003年の初開催以来、Red Bull Air Raceのオーガナイザーは世界5大陸にまたがる35以上のロケーションでエアレースを開催してきた。各ロケーションは独自の特徴を有しており、新鮮なサプライズや課題をもたらす。

Red Bull Air Raceでヘッド・オブ・イベントプロダクションを務めるマイク・ホースルは次のように説明する。「レース開催には、多大な時間と準備が必要になります。だからこそ、Red Bull Air Raceはあらゆる意味で他に類を見ないユニークなイベントなのです。このチャレンジがモチベーションになっています」

2018シーズンは全8戦が予定されているが、その中には待望のフランス・カンヌの初開催が含まれている。南仏を代表するこの美しい都市でのRed Bull Air Race初開催に向けた準備を、イベントプロダクションの視点から順を追って解説していこう。

 

カンヌへのカウントダウン:開催12カ月前

全てのレース開催地同様、カンヌでのプロセスもRed Bull Air Race運営首脳陣とホストシティパートナーによる開催実現の話し合いから始まる。

「ホストシティパートナーは、民間企業、観光局、市長など様々です。レース誘致を目的とした複数の関係団体のコラボレーション(委員会)の時もあります」

全団体が揃うと、次は "実行可能性の現地確認" へ進む。ここではシリーズディレクターとヘッド・オブ・プロダクション(ホースル)、ヘッド・オブ・アビエーションの3者が開催候補地を訪れ、それぞれの専門知識と責任に基づいて特定のエリアを確認していく。

ホースルは「長所、そして問題が予想されるポイントを特定し、質問します。そのあとで、実行可能性をまとめた "フィーリシビリティ・レポート" の作成に取りかかり、Red Bull Air Raceの各部門に提出します」と語る。

Red Bull Air Raceの各部門は開催地に関するさらなるリサーチを進め、48時間以内に詳細レポートを作成する。この情報をもとに、運営首脳陣がミーティングを行い、カンヌがレース実行可能な開催地であると判断し、準備の詳細を確認する。

「初期段階からビジネスモデル全体を細かくチェックしていきます。なぜなら、予定外の変更があれば予算がすぐに影響を受けるからです」とホースルは付け加える。

[写真] 開幕戦アブダビのメディアセンター ©Joerg Mitter/RBAR

開催8カ月前

オーストリア・ザルツブルグにあるRed Bull Air Race本部での初期計画が終われば、次の大きなステップは開催地訪問だ。2日間に渡り、Red Bull Air Raceの現場スタッフがカンヌ周辺を調査し、大型イベントのプロデュース実績を持つ地元代理店と打ち合わせをする。

ホースルが説明する。「カンヌは世界的なイベントをホストしてきましたが、Red Bull Air Raceのような規模のイベント開催は実績がありません。Red Bull Air Raceは空を使うので、3次元のイベントになりますし、また世界中に生中継される高品質な番組も制作するので、プロダクションは複層的です」

開催地訪問が終了する頃には、Red Bull Air Raceイベントプロダクション部門が仮設インフラやセキュリティ・交通規制・建設・オフィススペース・衛星回線など様々な分野との共同作業をスタートさせる(並行して、Red Bull Air Race Aviationがフランス航空総局と折衝を行う)。

次は書類関係の作成だ。運営チームはレーストラック・周辺のセーフティーゾーン・パブリックビューイングエリア・スカイラウンジ(VIPホスピタリティエリア)・飲食ブース・メディアセンター・番組制作エリア・各種オフィスなどの設置場所、そしてレースウィークエンドを通じて観客が全てのアクティビティとアトラクションを楽しめるレイアウトが計画される。

書類関係の初稿がまとまると、開催地の各関係者にも共有される。最終稿が仕上がるまで加筆と修正が続く。

 

開催5カ月半前

書類関係が完成すると、Red Bull Air Race 番組制作チームを含めた運営各部門との話し合いが活発になる。コマーシャル部門は観戦チケット関連業務を行い、広報がレースに関する情報を各方面に発信する。

並行してイベントプロダクション部門では、運営チームメンバーの渡航スケジュールの確認やケータリングエリアの追加など、必要な部分の微調整が行われる。

解決しなければならない課題もある。カンヌ国際映画祭の会場として知られるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレは、Red Bull Air Raceにとっても重要な施設になるが、開催がメディア見本市とカンヌ国際映画祭の間に挟まれているため、通常のRed Bull Air Raceよりも設営・撤収の時間が大幅に削られた。さらに、カンヌはRed Bull Air Race史上初の3日間開催になるため、スケジュールは一層タイトになっている。この解決策として、夜間シフトが追加された。

[写真] 貨物総量320t、スタッフ1,200名... レース開催に膨大な労力が注がれる ©RBAR

開催4カ月前

この時期になると、開催地及び周辺地域の代表者たちとの密接な作業を経て、許可申請関係が最終局面を迎える。ディスカッションで細部まで詰められ、1月末までにはフライトスケジュールから最大客席数までの全てが合意に達し、文書化された。

「Red Bull Air Raceに関しては、単純な許可申請以上のものであるべきだと考えています。地元と繋がり、イベントへの理解を深めてもらい、最高の実施プロセスを作り出すためのものだからです」とホースルは語る。

 

開催3カ月前

カンヌでの準備が進む中、イベントプロダクション部門は2018シーズン開幕戦の地、アブダビで作業を行なっていた。ホースルは次のように語る。「カンヌのプロダクションパートナーの皆さんをアブダビにお招きし、カンヌに似た運営環境を体験していただきました。より理解してもらうための貴重な実地体験になりました」

 

開催10週前

開催10週前を迎えると、もうひとつの大きな節目、 "バーチャル・ウォークスルー" が実施される。バーチャル・ウォークスルーでは、イベントプロダクション部門が全てのマップや計画表を集め、Red Bull Air Race運営本部の全スタッフがひとつの会議室でインフラやイベントを細部まで確認する。

 

開催4週前

3月中旬までには全ての準備が整い、宿泊ホテルや機材到着日時などのスケジュールが確定する。カンヌのレーストラックで使用されるエアゲートを固定するためのアンカーの設置場所も決まったが、これには特別な工夫が求められた。

カンヌ湾沿岸部の85%を覆う海藻を保護するため、特別な環境プランが施行された。デリケートな生態系を保護するために、Red Bull Air Raceはヨーロッパ企業と協力してカンヌ湾のソナースキャンを実施し、海底の3Dイメージ図を作成。エアゲートの固定に必要な約50本のアンカーを安全に設置できる場所を正確に特定した。

「開催4週前になると、最新情報が全体で共有されています。プランの変更はほとんどありません」とホースルは語る。

 

開催3週前

イベントプロダクション部門とロジスティクス部門の担当者が必要な機材や物資をカンヌ市内から調達する。

 

開催2週前

運営の中核を担う100名がカンヌに到着し、設営作業が開始される。

[写真] レースタワーは最重要施設のひとつ ©Joerg Mitter/RBAR

開催1週前

開催1週前になると、イベントエリア内で働く人数は700名に増加する。

 

開催前日

フランスで初めてRed Bull Air Raceのパイロンが立ち上がる。

 

4月20日〜22日:Red Bull Air Race World Championship 2018シーズン第2戦 カンヌ

1年以上に及ぶ全準備作業は、この3日間のためにある。金曜日に観客を会場に迎え入れてフライトが始まれば、土曜日の予選を経て日曜日の決勝レースで勝者がトロフィーを授かるまではあっという間だ。

 

開催後

ホースルは笑みを浮かべて次のように説明する。「カンヌはまだシーズン第2戦ですからね! レース終了から1週間以内に撤収作業を完了させ、全ての資材を5月末に開催される第3戦千葉に向けて発送します。別の言い方をすると、カンヌのクロワゼットでレースが終了したわずか1週間後には、先行チームが千葉での設営を開始しているのです。連続作業ですが、1つとして同じレースはありません」

 

◾️Information

2018シーズン 第2戦カンヌは4月21日、22日に開催。

第3戦千葉が5月26日、27日に開催決定。観戦チケットが現在発売中。詳細は特設サイト http://rbar.jp でご確認ください。