マスタークラスパイロットのオフシーズン

2018シーズンを前に世界最速のパイロットたちはどんな時間を過ごしているのだろうか?

Sonka preparing for 2018

室屋義秀がインディアナポリス・モーター・スピードウェイでRed Bull Air Race World Championship 2017シーズンのワールドチャンピオンに輝いたのが10月15日。実は各チームはそれよりも前から、短いオフシーズンを最大限活用する計画を立てていた。2018シーズンに向けてトップパイロットたちがどのように過ごしているのかについて、数人のパイロットを例に挙げながら紹介していこう。

室屋義秀のオフシーズンは、無数のインタビューと出演依頼をこなすことからスタートした。日本のファンが日本人初のワールドチャンピオンのストーリーに飽きることはないからだ。また、キャリア初の総合2位を獲得したマルティン・ソンカもメディア対応に追われており、ソンカのインタビューは『Forbes Life』誌の秋の増刊号のカバーストーリーにも選ばれた。しかし、カメラの前に立ったり、サインを書いたりしていない時の2人は、チームメンバーとミーティングを重ねながら、来シーズンの戦いに向けて準備を進めている。

 

2017シーズンを総合3位で終えたピート・マクロードは、シーズン終了2週間前に授かった娘アリアとの時間を楽しんでいるようだ。マクロードは「娘が生まれたばかりなので家族の時間を楽しんでいるが、例年通り最終戦終了直後にオフシーズンがスタートしているので、カナダで機体の調整にも取り組んでいる」とコメントしている。

機体の調整に取り組んでいるのはマクロードだけではない。これは全チーム共通のオフシーズンのテーマだ。
フランソワ・ルボットは「自分たちにオフシーズンはない。最終戦インディアナポリスを迎える前から、フランスに機体を持ち帰って調整を加える計画を立てていた。たとえば、今のエンジンカウルが上手く機能していないので、時間とリソースを手に入れ次第、この部分の調整に取りかかる予定だ」とコメントしている。

また、同じくフランス人パイロットのミカエル・ブラジョーは「機体の調整に関しては沢山のアイディアがある。具体的な内容を明かすことはできないが、来シーズンの機体を見ればすぐに分かるだろう」とコメントしている。

オーストラリア人パイロットのマット・ホールもブラジョーと同じく機体のルックスに変更を加える予定だ。2017シーズン終盤に2度の表彰台を獲得したホールは「機体にいくつかの変更を加える予定だ。変更によってもう少しスピードが得られることを期待しているが、基本的には2017シーズン終盤の流れを維持できるように集中していくだけだ」と説明している。

機体に費やす時間をできる限り増やすために、多くのパイロットが最終戦インディアナポリス終了後もそのまま米国に残って作業をすることを選択している。チェコ人パイロットのペトル・コプシュタインは「米国に残って機体の変更やテストを重ねている。2018シーズンを万全の状態で迎えて、スタートダッシュに成功したい」と説明している。

チリ人パイロットのクリスチャン・ボルトンも米国に残っており、南カリフォルニアでチームと共に機体に変更を加えながら、フライトトレーニングを重ねている。ボルトンは「機体を改良して、戦えるチームになることを目指している」と意気込みを語っている。

フランス人パイロットのニコラス・イワノフも米国に残って技術的な改良に取り組んでいる。通算5勝を誇るベテランは野心的な計画を用意しているようだ。「やるべきことは山ほどある。なぜなら、2017シーズンはここ10年で最悪のシーズンだったからだ」と率直に切り出すイワノフは「新機体を導入するわけではないが、カリフォルニアで変更を加える予定だ。時間をかけて機体を組み直し、ほとんど新機体と言える状態まで持っていきたい」と続けている。

もちろん、9ヶ月間の移動とレースの日々を終えたパイロットたちには充電期間も必要だ。大半のパイロットと同じく、スペイン人パイロットのフアン・ベラルデとドイツ人パイロットのマティアス・ドルダラーは、束の間のバケーションを楽しんだ。2人とも海を愛しており、ベラルデは趣味のカイトサーフィンを、ドルダラーは米国西海岸のビーチでの時間を楽しんだが、ドルダラーはスピードへの欲求も満たしたようだ。2016シーズンのワールドチャンピオンは、オリンピックのセーリング競技金メダリストのローマン・ハガラとハンス・ピーター・シュタイナッハーと共にRed Bull Sailingのカタマランヨットに乗り込み、エクストリームセーリングシリーズのレースを体験した。

 


また、オフシーズンはパイロットとチームに別の形でファンと交流する時間も提供する。米国人パイロットのマイケル・グーリアンとカービー・チャンブリスは例年通りファンとの時間を楽しんでおり、グーリアンは最終戦インディアナポリスから2週間後にテキサスで開催された米国最大級の民間航空ショーに出演した。また、チャンブリスもいくつかの航空ショーへの出演を予定している他、12月には地元アリゾナにファンを招待して、風洞でのタンデムスカイダイビングをチームと一緒に楽しむイベントを開催する予定だ。


オフシーズンの内容はチームごとに異なるが、ひとつだけ確かなことがある。それは、どのチームにとってもオフシーズンは忙しいということだ。クリスチャン・ボルトンの次のコメントがその忙しさを見事に表現していると言えるだろう。「オフシーズンは短いが、全てを詰め込む予定だ」