PORTO RACE REPORT:まさかのトラブル... 険しくなったチャンピオン争い

この結果を、どう解釈し、どう受け入れればいいのかは難しい。軸足をどこに置くかによって、レースの解釈は180度変わってしまうからだ。

ポルトで開かれたレッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ第6戦で、室屋義秀は6位に終わった。これにより、室屋はチャンピオンシップポイントランキングで順位をひとつ下げ、4位に後退。このレースで優勝し、再びトップの座を奪い返したマルティン・ソンカから10ポイントの後れを取ることとなった。

室屋がトップに10ポイントも離されるのは、開幕戦終了時点を除けば、今季初めてのことである。残るレースが2戦しかないことを考えると、目標である年間総合優勝へ向け、かなり厳しい状況に立たされたと言える。

 

今回の予選前々日、室屋が愛機に大きなダメージを負ったことは、すでに予選レポートに記した。室屋曰く、「幸いにして修理できる箇所だったからよかったけれど、場合によっては(もう飛ぶことはできず)工場へ陸送することになり、このレースはもちろん、次のラウジッツ(第7戦)にも間に合わない可能性も十分あった」。それを考えれば、無事に第6戦を飛ぶことができ、しかも6位の5ポイントを加算できたことは、望外の結果だったと言ってもいいだろう。

機体のフレームにヒビが見つかったときのことを思えば、よくやった。そんな労いの言葉で今回のレースを締め括っても構わないのかもしれない。

とはいえ、結果として修理が可能になったことにより、「機体そのものはまったく問題なかった」と室屋。それだけに、スタートスピード超過によるペナルティタイム1秒の加算が致命傷となった結果のラウンド・オブ・8敗退は、やはりもったいなかった。

しかも、室屋と年間総合優勝を争う、ソンカ、ピート・マクロード、カービー・チャンブリスが揃ってファイナル4に進出。よくやったの一言で割り切るのは難しく、簡単には消化できない悔恨が残っても不思議ではない。室屋が語る。

「率直に言えば、トラブルに見舞われたこのレースは集中しにくいところが確かにありました。それを敗因にしたい気持ちは正直あります」

いかに機体には問題がなかったとしても、修理に時間を要した結果、全3セッションある公式練習のうち、2セッションをキャンセルせざるをえなかった。どんなに細かく事前にレーストラックを分析しても、実際のところ、飛んでみなければ分からないことはたくさんある。あまりに痛い、公式練習のキャンセルだった。

「(公式練習での)フライトの機会が少なかったので、バーティカルターンの感覚も、まだつかみ切れていない感じがありました。手探りの状況で日曜日の本選も飛ばなければならず、難しいフライントだったことは事実です」

だが、室屋は「でも」と言って言葉をつなぐと、こう続けた。

「自分のなかの反省としては、メンタル的な部分が大きい。スタートのところで、少し熱くなってしまうところがありました」

 

今回のポルトのレースは、直線的な高速コースであることに配慮し、スタートスピードの制限は通常の200ノットではなく、180ノットに抑えられていた。これにより、余力を残してスタートゲートに向かう機体は加速しやすい、つまりはスピード超過を引き起こす危険性が通常のレースに比べて高かったのである。加えて、高さのある橋を越えてから一気に降下してスタートゲートに向かうというコースレイアウト上、スタートゲートの手前で速度が大きく変化しやすかったことも災いした。

「ベン(レース分析担当のベンジャミン・フリーラブ)とも、今回のスタートは難しいので気をつけなければいけないと話していたんですけどね......」

室屋はそう切り出すと、こわばった表情で無念の思いを吐き出した。

「ラウンド・オブ・14でのソンカのタイムがわずかとはいえ、(室屋のタイムより)前にいたので、スタートも含めてどこかで縮めなければいけないという気持ちがあったんでしょうね。自分でそれを感じてはいませんでしたが、知らず知らずのうちに少し力が入ってしまったのかもしれません」

室屋にしてみれば、ほんのわずかな誤差によって生じたミスだったのだろう。それでも、そのわずかな誤差が結果として10ポイントもの差となって表れるのである。室屋は引きつった笑みを浮かべて語る。

「これがゲームの怖さであり、難しさですよね」

残り2戦で10ポイント差は、すなわち室屋に自力での年間総合優勝の可能性が消えたことを意味する。仮に室屋が残り2戦を連勝したとしても、ソンカがいずれも2位になってしまえば、6ポイントしかつめることができない。それどころか、次戦の結果次第では完全に年間総合優勝の可能性が消滅してしまう事態もありうる。

 

シーズン前の目標に掲げた年間総合優勝を達成するためには、もはやひとつのミスも許されず、そのうえで、いくらかの運にも助けてもらわなければならない。

それでも室屋は「まだまだ自分の足りない部分が、こういう形で結果に表れてしまう」と反省の弁を口にしたうえで、「でも、まだチャンピオンシップ争いに加われる範囲内にはいると思うので。日々精進して、足りないところを一個一個埋めていくしかありません」と、努めて前向きに語る。

次戦、ラウジッツで行われる第7戦は、室屋にとってまさしく背水の陣となる。

 

(Report by 浅田真樹)

 

■Information

ポルト戦、予選のレポートはこちら>>
マスタークラスパイロットのレース後のコメントはこちら>>