ジェット戦闘機 vs. レース機体

ジェット戦闘機とレース機体の間の相違点と共通点とは? 空軍パイロットの経歴を持つRed Bull Air Raceパイロットたちが語り尽くす

Sonka in his raceplane

Red Bull Air Raceのパイロットたちは、それぞれ異なる航空経歴を持つ。旅客機パイロット出身の者がいれば、インストラクターやエアロバティックスの世界で活躍してきた者、そして音速でフライトする空軍ジェット戦闘機を操縦してきた経験を持つ者もいる。

2018シーズンのマスタークラスパイロット14名のうち、マルティン・ソンカ、クリスチャン・ボルトン、ベン・マーフィー、マット・ホール、フランソワ・ルボットの5名が、それぞれの母国で空軍パイロットとして活躍してきた。そこで、彼らにマスタークラスのレース機体とジェット戦闘機の違いについて訊ねることにした。

今回は、ボルトン / ルボット / ソンカの3人に、パイロット経験から見出したレース機体とジェット戦闘機の相違点・共通点を話してもらった。

レース機体とジェット戦闘機の明確な共通点は、空を飛ぶために作られている点、操縦桿とスロットルで基本動作を行う点、そして視覚、または知覚に物理的負荷を与える点だ。

[写真] フランス空軍パイロット時代のフランソワ・ルボット ©Photo Courtesy of François Le Vot

フランス空軍パイロットとして長年活躍した経歴を持つフランソワ・ルボットは次のように説明する。

「他に共通点はない。フライトの目的は完全に異なる。ジェット戦闘機の目的は、地上・空中の目標物への攻撃だ。機体のあらゆる部分がこの目的のために設計されており、言わば操縦は二の次だ。機関砲やミサイルなどで目標物を破壊するミッションにパイロットが集中できるように全てがデザインされている。現代の兵器システムとジェット戦闘機は、パイロットが操縦から解放され、戦況の把握だけに集中できるようになっている。そして、パイロットも、複雑に変化する戦況を常に把握できるように、ジェット戦闘機のフライトをできる限り簡略化・自動化しようとする」

また、ルボットはジェット戦闘機の満足感はフライトから来るものではなかったと続ける。

「満足が得られるのは、周辺環境を把握し、状況をコントロールしながらターゲットを破壊した時だ。Gフォースなど、フライトから得られる "副次的" な部分からは得ていない。一方、エアレースでは、パイロットは全神経をフライトの感覚や軌道、機体から伝わるフィードバックに向けており、レーストラックのフライト中は計器類をほとんど使用せず、基本的には自分の感覚だけを頼ることになる。これが空を飛ぶ楽しさと機体をコントロールしている満足感を生み出している」

チリ空軍にパイロットとして在籍した経歴を持つクリスチャン・ボルトンも、レース機体とジェット戦闘機の間には多くの相違点と共通点があると考えている。

「ジェット戦闘機はパイロットの入力に速やかに反応するように設計されており、機動性に優れている。ジェット戦闘機は超高速での旋回・ロール・上昇・降下が可能だ。そして、現代のジェット戦闘機の大半がコンピューターを搭載していて、パイロットのフライトをアシストしている。コンピューターがなければ現代のジェット戦闘機を制御するのはほとんど不可能に近い」

[写真] クリスチャン・ボルトンはチリ空軍に在籍していた©Photo Courtesy of Cristian Bolton Racing

マルティン・ソンカもまた、フライ・バイ・ワイヤ(fly-by-wire:電子制御された機体操縦)を備えたジェット戦闘機を操縦した経験を持つ。

「レース機体は、操縦桿を動かせばその通りの反応をする。一方、ジェット戦闘機は、ジョイスティックで入力し、それに従ってコンピューターが操縦翼面をどう制御するかを決定する。ジェット戦闘機のフライ・バイ・ワイヤではコンピューターが最善策を決定するので、レース機体のような操縦感覚は得られない」

ソンカとボルトンは、ジェット戦闘機とレース機体には以下の共通点があると続ける。

ソンカは「ドッグファイトやレースなど、どちらの機体もアグレッシブなフライトを目的に作られている。空軍在籍時に高速低空飛行の技術を学んだが、これはエアレースに共通している。ジェット戦闘機とレース機体は完全に異なるが、操縦技術の一部は応用可能だ」と語る。

[写真] ソンカは長年に渡るジェット戦闘機操縦経験を持つ ©Photo Courtesy of Martin Sonka

ボルトンが続ける。「共に優れた機動性を誇っているが、最大の違いはレース機体には機体制御をアシストするコンピューターが搭載されていないという点だろう。レース機体では、パイロットの入力だけで操縦翼面の挙動が決まる。全ての制御系統は油圧チューブやケーブル類を介して操縦桿とダイレクトに繋がっているので、パイロットの入力の強弱が機体の反応スピードに直接影響を与える。当然、速度域はジェット戦闘機の方が高いが、レーストラックの高速低空飛行から得られる感覚は、ジェット戦闘機の低空飛行から得られる感覚にとても近い」

では、彼らはジェット戦闘機とレース機体のどちらを好んでいるのだろうか?ルボットは次のように締めくくる。

「どの機体に搭乗しても大きな満足感を得られる自分は幸せ者だ。高価なハイテクの結晶と言えるジェット戦闘機はチェスと射撃を同時に楽しむような感覚が得られるが、シンプルで小型のレース機体から得られる "空を飛んでいる" 感覚も究極だ。これは矛盾と言えるが、高度が低いほど、空を飛んでいるという興奮が高まる」

 

◾️Information

2018シーズン 第2戦カンヌは4月21日、22日に開催。

第3戦千葉が5月26日、27日に開催決定。観戦チケットが現在発売中。詳細は特設サイト http://rbar.jp でご確認ください。