室屋義秀選手 インタビュー: 後編

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ唯一の日本人パイロット、室屋義秀選手。後編では自身のチーム「TEAM MUROYA 31」や、新しいEdge V3、そして活動拠点でもある福島から見た日本の現状などについて語る。

Team Muroya 31 - Portrait

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ唯一の日本人パイロット、室屋義秀選手。後編では自身のチーム「TEAM MUROYA 31」や、新しいEdge V3、そして活動拠点でもある福島から見た日本の現状などについて語る。


■「TEAM MUROYA 31」ではどんな役割

チームをどう設定するかはパイロットの役割です。その設定さえすればみんなそれに沿って動いてくれます。チームマネージャーは別にいますが、チームマネージャーをアサインするのは自分の役割です。

チームには色んな国籍の方がいますし、そもそも人が何人か絡めば要対応なことが色々と出てくるので、取りまとめることにも時間を割く必要があります。

■自分がライバルと見ているパイロットは

意外と聞かれますが、特に居ないと考えています。僕を含めて2009年デビューした4人はいい仲間でありライバルですかね。マット・ホール、ピート・マクロード、マティアス・ドルダラーと僕ですけど、みんな去年からぐっと成績上位にいますし、みんな10か月以上一緒にトレーニングしていますし。

ある意味手の内も知りつつ、いいライバルでもあり、その4人組の中で競いあっている感じはあります。

■自分の飛行スタイルはどんなスタイル

難しいですね。サムライ・スタイルとでも言ってくれれば。空手などで言う「型」みたいな、型をピシっと決めていく、そういう風なスタイルが好きです。

■飛行前にイメージトレーニングはどのようにするか

精密に頭の中でコマ送りをして、コースを大体覚えていって、撮ったビデオも見つつ、どのタイミングでなにをするかを覚えていきます。離陸したらこの辺でなにをする、ちょっとあげて左にターンして、というように、頭の中で1秒間に10フレームくらいにしてずっと正確にやっていきます。パイロンがここでこう見えたのでこうする、というのを結構正確にずっと考えてやっていきます。頭の中でコマを作っていって、徐々に1倍速にしてつないでやっていく。

パイロットによっては缶を立ててイメージングしますが、これは一番最後の確認です。ターンをする場所をイメージしてやっていく。

■コースレイアウトの微妙な変化にも気づくか

元々来ていた図面とコースレイアウトが違っている、ということは以前たまにありました。ずっとイメージしていたものと変わっていたり。とはいえ風が吹くと機体が流されたりするし、他の要素も加わってくるので結構イメージしているものと実際の飛行は変わります。

■競技の中で一番きつい技は

今はバーチカル・ターン系統のものが結構きついです。最近は水平で回るコースが多くなってきています。水平で回るのも、4秒などの高いGがかかるときついですし、本当に目いっぱいターンするのは技術的にもむずかしいのでそこがきついです。

■今話題になっているウィングレットをつける効果は

翼の端は空気が巻いています。ウェイングレットをつけている旅客機の場合は空気抵抗が減りますが、エアレース用の機体の場合はターンをするので、ウィングレットをつけると面積が増えるため、どっちがいいかという議論はありました。ナイジェル・ラム等がつけて結果的に速くなったので、良さそうだということでみんな付け始めました。

■新しい機体、Edge V3について

V2と比べてV3は機体の基本構造は同じですが、カーボンなどをよりよいものにして、重量が50kgほど落ちています。空力の洗練や細かい部分を改善しているので3%程性能が上がっています。タイムで言うと1秒から1.5秒は順当にペースで上がるくらいの性能。1秒速くなると、レッドブル・エアレースではファイナルに残れるくらいです。非常に性能が良くて面白くなります。

■Edge V3はオーダーメイドか

操縦席まわりとかは自分に合うようにフィットさせています。基本構造はレギュレーションでいじれないので、操縦席、セッティングなど様々な箇所を調整しています。

■今までとどう違うか

機体はとても軽いので操縦性が良いです。もっとトリッキーかと思っていましたが、非常に落ち着いています。操縦もしやすく、いい感じです。

■Edge V3を作るにあたっての裏話

もう一段階改造を進めていて、今現在もパーツを作っています。日本戦の開催があることがはずみとなって、導入にこぎつけました。日本戦がなければできなかったかもしれないです。

■今シーズン、来シーズンの目標は

狙うメインの目標は、来年のシリーズチャンピオンです。来年はシーズンスタートから勝ちに行ける体制を作るために、今からいろいろな準備をしています。機体の導入もその一環。今年はセッティングを色々と調整して、落ち着いて来ればファイナルに残ってくると思うので。

今シーズンは4位くらいにポジションを固められるくらい、きちっとチームと体制を固めていきたい。2016年は頭から勝ちにいけることを目標にしています。

■日本で初開催のレッドブル・エアレースに関して

生で見るのと映像は全然違います。やっぱり足を運んでもらって見てほしい。生の迫力は、自分もびっくりするくらいでした。映像でもちろん見ていましたが、それでも最初見たときは「この人たちは本当にすごいな」と思いました。生の迫力とスピード感をぜひ見てほしい。細かいところは言わなくても、見ればわかります!

■幕張の会場の注目ポイントや特長は

風とかですかね。でも意外とフラットで安定した場所だと思います。戦略的にちょっと他のコースとは違う感じになりそうです。

■競技で飛んでいるときに観客は見えるか

競技中はさすがに見えないです。レース入る前に上空で待機しているときはチェックしますから、当然いっぱいいれば分かります。皆様からの声援は後押しになると思います。自分ひとりでやっているわけではないので、チームがあって、ファンがあってなので、やっぱり燃えますよね。

■パイロットになりたい少年少女へのアドバイス

パイロットになるのはそんなに難しくないので、なりたい人はすぐ兆戦できます。パイロットライセンスを取るには最低40時間。それに比べてクルマは35時間です。学科もありますが、飛ぶということは言うほど難しくはないです。遥かかなたのものではないですし、やろうと思えばできるので、興味があればインターネットで調べてみてください。決してやれないことではないです。

■福島を活動ベースにしているが、そこから見えてくる日本の現状とは

福島は結構甚大な被害を受けていて、復興までおそらく30年40年の時間はかかると思います。
私自身、元々震災前から福島をベースにしているので、震災前と比べ活動の内容自体は変わらないです。震災後で言えるのは、その「福島から世界に向けて戦うこと」に意味が出た、という形。元々やっていたのでそこは変わらずですが、今となっては思っていた以上の意味が出てきました。それを背負っていくということは自分としては変わってはいませんが、福島県民にとって明るい光になれればと思っています。一県民、一社会人としてできることをやりたいと思っています。

■レッドブル・エアレースが日本にやってくる意味は

超巨大なイベントを日本でやることは維新みたいなものがあると思います。日本における小型機の世界は世界に比べて相当遅れているので、レッドブル・エアレースみたいな規模のイベントを開催できるのは大きなステップです。

飛行機の世界では、「そんなこと絶対できないでしょう」と言うのが大方の意見でした。レッドブル・スピリッツと言いますか、レッドブル・エアレースを実行することは、世に甚大なる影響を及ぼすと思います。終わってからしばらくしてかもしれませんが、後から伝説となってゆくのではないでしょうか。

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