アブダビ2019予選レポート:作戦通りのフライトで3ポイントを勝ち取る

53秒786、 53秒222、 53秒165、53秒024。

 

フリープラクティス(FP)の1、2、3本目、そして予選と、段階的に上がっていった4つのタイム。しかも、そのすべてが53秒台。全14パイロットのなかでただひとり、室屋義秀だけが描くことのできた、高次元の美しい上昇曲線である。

 

パーフェクトなシーズンスタート。そう言い切って構わないだろう。

 

「まだ初戦の、しかも予選だけですが、チームは非常にいい状態にあり、決してラッキーではなく、勝つべくして勝つことができた。何より気持ちよくスタートを切れたのがよかったし、会心のフライトだったと思います」

 

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップの2019年シーズンは、毎年恒例のUAE・アブダビで開幕戦を迎え、2月8日に予選が行われた。

 

©️Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool

 

昨年のチャンピオンシップポイントランキングのリバースオーダーにより、10番目に飛んだ室屋は、1本目で53秒516を記録。「だいたい狙った通りのタイム」で、トップに立っていたピート・マクロードの53秒240に次ぐ、2位につけた。

 

そして迎えた、予選2本目。ラインはそれほど変えることなく、バーティカルターンに入るタイミングを少しだけ早くする。ターゲットタイムは53秒フラット。「それが出せれば、予選は勝てるだろうと思っていました」

 

緑と青に染め分けられ機体が、真正面から強い西日を浴びながら、フィニッシュゲートを通過する。記録は53秒024。室屋は狙い通りのタイムでマクロードを上回ると、最後までトップの座を他に譲ることはなかった。

 

レッドブル・エアレースは今年からルールが改正され、予選結果に応じて、1位から3位までにそれぞれ3、2、1ポイントが与えられることになった。室屋曰く、「さすがに全部(予選トップを)取れるとは思っていないが、(予選だけで)10ポイントくらい取れれば、チャンピオンシップポイントランキングにも大きく影響してくるはず」。だからこそ、室屋はこの予選を「勝ちに行きました」

 

©️Sebastian Marko/Red Bull Content Pool

 

用意周到の戦略だった。

 

今年のレッドブル・エアレースでは、チャンピオンシップポイントの変更と同時に、オーバーGのペナルティ基準が変更されている。昨年は10Gを超えても12G未満であれば、超過時間が0.6秒以内ならノーペナルティとして扱われていたが、今年は超過時間に関係なく、11Gに達した時点で1秒のペナルティタイムが加算される。

 

多くのパイロットが、このルール変更への対応に苦しむなか――全14パイロットのうち5人が、予選でオーバーGのペナルティを受けている――、室屋は「10Gを少し超えるくらいに抑えて飛べば、もし風の影響やコントロールのズレが多少あったとしても、絶対にペナルティをもらわない。しかも、繊細にコントロールして抵抗を減らすことで、スピードは落さない。その領域で飛べるように練習してきた」

 

実際、室屋は予選の2本のフライトで、バーティカルターンを4度、ハイGターンを4度回っているが、そのほとんどが10G前後に抑えられ、最大でも10.5G程度しかかけていない。他のパイロットの多くが、ペナルティとなる11Gギリギリまで使って飛んでいるのとは大きな違いだ。

 

つまり、室屋がオーバーGとなる可能性はほとんどなく、「ペナルティのリスクがあるとすれば、(バーティカルターンに入る際の)クライミングのタイミングだけだった」のだ。