機体の分解・組立

Red Bull Air Raceではパイロットと機体の真価が問われる。パイロットにとっては集中力、精度、戦略、ベストパフォーマンスがすべてであり、テクニシャンにとっては、機体をベストの状態に仕上げることがすべてとなる。

Red Bull Air Race World Championshipは世界各地を転戦するため、機体は3大陸にまたがる全8戦に向けて輸送されるが、輸送するためには、機体は分解・梱包されたあと、再び組み立てられるという手順を踏むことになる。その手順を踏んで既にシュピールベルクに到着している各機体は、これからレース本番に向けた調整が行われる。

輸送のための機体の分解・組立は慎重かつ正確に行わなければならないため、かなりの重労働になる。この段階でなにかミスがあれば、レース本番に大きな影響を及ぼすことになるが、各チームと輸送会社はエキスパートであり、自信を持ってこの作業に取り組んでいる。

ハンネス・アルヒのチームでテクニシャンを務めるナイジェル・ディッキンソンも、当然ながら機体の分解と組立に精通している。彼の手際はもはや芸術の域に達しており、彼がいなくても機体は現地で問題なく組み立てられていく。ディッキンソンは整理整頓がカギだとしている。

「分解と梱包には約6時間、組立には約8時間かかりますね。細かく仕切られた小さなプラスティック製のボックスを用意してあるので、そこにボルト類をパーツ別に分類して入れていくんです」

ディッキンソンは最も難しい作業は翼の解体だと続ける。翼は重量こそないが、サイズが大きいため、2人以上で扱わなければならない。

「翼は難しいですね。操縦桿から伸びているコントロール系を外す必要がありますし、アンテナが内蔵されている他、ピトー管も備わっているので、これらをすべて外す必要もあります」とディッキンソンは説明するが、作業はこれだけでは終わらない。燃料パイプと燃料タンクも外さなければならない他、その中身を空にしなければならない。これらは非常に厄介な作業で、細心の注意を払いながら、正しい順番で行う必要がある。

緻密な輸送作業

 

開催地から開催地への輸送に話を移そう。船で輸送される場合はひとつのコンテナの中に機体を収めなければならないため、収納は決まった手順を踏まなければならない。最初に主翼用ボックスを入れ、続いて尾翼用ボックスをその上に重ねて、コンテナの奥へ押し込む。次に胴体部を後ろ向きに入れていき、奥に重ねてある主翼と尾翼の上に後輪を置き、胴体部が水平になるように収納する。そのあとで、細かい部品を入れたツールボックスを入れれば完了となる。

輸送スケジュールは細かい部分まで決まっているが、そこに大きな影響を与える不安要素がひとつある。天候だ。2015シーズンの千葉は台風の影響で輸送と組立が遅れた他、天候が回復するまですべてのインフラを一時的に会場外へ移す騒ぎとなった。シュピールベルクの機体の組立もあと数日でスタートする予定だが、現時点では特に問題は起きていない。各機のLycoming Thunderboltエンジンがもうすぐその咆哮を響かせるはずだ!

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