2017シーズン ルックバック:アブダビ

この3本のトレーニングセッションで圧倒的なフライトを披露したのは2人のチェコ人パイロットだった。マスタークラス2シーズン目のペトル・コプシュタインが首位2回、3位1回を記録し、コプシュタインが3位に終わったセッションでマルティン・ソンカが首位を記録した。

トレーニングやフリープラクティスのタイムが良くても、決勝レース日に結果を残せなければ意味がないと反論するパイロットもいるが、チェコ人コンビのタイムは素晴らしかったことに変わりはなく、残りのパイロットたちのターゲットタイムを設定した。

続くフリープラクティスでは、カービー・チャンブリス、2016シーズンのワールドチャンピオン、マティアス・ドルダラー、そしてマルティン・ソンカと、3人の異なるパイロットがトップタイムを記録した。

全パイロットが本気を出し始めたのが、金曜日の午後に行われた予選だった。彼らは予選を通じて、オフシーズンの準備が正しかったのかどうかの最終確認を行う。1番手はマスタークラスデビューを飾ったミカエル・ブラジョーで、53秒326とルーキーながら好タイムを記録し、最終的に予選を7位で終えた。そして、同じくマスタークラスデビューのクリスチャン・ボルトンも8位のタイムを記録。この結果、ラウンド・オブ・14でのルーキー対決が決定した。

January 1st

マイケル・グーリアン:2018シーズンを振り返る

・最終戦フォートワースが終了してからしばらく時間が経ちましたが、シーズンを振り返る時間はありましたか?

少し振り返った。フォートワースは残念な結果に終わった。エンジンの不調がウィーナー・ノイシュタットとフォートワースでの失敗に繋がってしまった。この2つのトラブルがなければ、タイトルを獲得できていただろう。そう考えると、現実は受け容れづらいが、素晴らしいシーズンを送ったことに変わりはない。今シーズンは3チームが頭ひとつ抜き出ていたが、我々はそのひとつだった。素晴らしい結果だと思う。チーム全体の一貫した努力と、シーズンを通じてのパフォーマンスを誇りに思っている。
 

急成長を遂げたブラジョー&マーフィー

元エアロバティックスチャンピオンのブラジョーは、チャレンジャークラスに2シーズン参戦したあと、Red Bull Air Raceマスター・メンター・プログラム(Master Mentoring Program)に参加し、2014シーズンのワールドチャンピオン、ナイジェル・ラムから直接指導を受けた。そして、ラムの現役引退を受け、ラムが使用していたレース機体とチームメンバーを引き継ぐ形で2017シーズンからマスタークラスに昇格したフランス人パイロットは、ルーキーシーズンで24ポイントを獲得。

さらにはラウンド・オブ・8進出4回というマスタークラスルーキー新記録を打ち立てた。また、2018シーズンのブラジョー率いる#11RACINGはさらなるレベルアップを果たし、初の表彰台を獲得すると共に総合4位でシーズンを締めくくった。「努力こそが成功の秘訣だ」と現在31歳のブラジョーは語る。「個人の努力とチームの努力、ここに極めて高いモチベーションと素晴らしいチームスピリットを加える。あとは、限りなくベストなフライトをするだけだ」

MATT HALL RACING:復活を支えたチームワーク

「過去2年でチームに関する変更を数多く行った。回数はかなり多かった。自分の決断だったものもあれば、残念ながら、不可抗力によるものもあった」とホールは切り出す。「しかし、優れたチームがなければ、World Championshipのトップレベルでは戦えない。この考えがブレることはない」

Matt Hall Racingの最新メンバー、テクニシャンのデビッド・フィンチは、チームに初合流した2月の2018シーズン開幕戦から20年以上航空業界で積み重ねてきた経験をチームに持ち込んでいる。ホールとフィンチはその前からオーストラリア国内で共同作業の可能性について話し合いを続けていたが、前任テクニシャン、ロン・シマードの急逝を受け、ホールは "フィンチー"(フィンチの愛称)に正式なチーム加入を要請した。それから2週間後、フィンチは開幕戦の地、アブダビへと向かっていた。

「アブダビでレース機体を初めて目にしました」とフィンチは回想する。「当初は、構造的な部分について私の意見を伝えることが仕事でした。機体には非常に複雑な電子制御システムが備わっており、また、数多くのデータポイントも存在するので、そのような部分に自分の経験を落とし込んでいました。その後は、ロンが手がけていた改造にフォーカスしました。あとは微調整を行うだけの状態でしたね」

フォートワース:ソンカが優勝&ワールドチャンピオン!

テキサス・モーター・スピードウェイでの戦いを制すればワールドチャンピオンになれたソンカの決勝レース日はハードな戦いが続いた。

ソンカは、ラウンド・オブ・8で、総合首位でこのレースに臨んでいたマイケル・グーリアンと対戦し、その激戦を制して臨んだファイナル4も4番手でフライトしなければならなかった。

ファイナル4はカービー・チャンブリスが1番手でフライトし、54.064秒を記録。決勝レース日は天候が常に変わっていたため、このタイムが優勝ラインになるのかどうかは誰にも予想できなかった。

次にベン・マーフィーが2番手として登場し、全てのスプリットタイムでチャンブリスを上回ったが、フィニッシュゲート通過タイムはわずかにチャンブリスから遅れてしまった。

3番手はソンカと同じくワールドチャンピオンの可能性が残されていたマット・ホールだった。ホールは53.100秒という素晴らしいタイムを記録し、ソンカを残した段階で暫定首位に立った。

そして最後に登場したソンカは全力でフライト。52.796秒というパーフェクトタイムでホールを上回り、フォートワース優勝と同時にワールドチャンピオンを確定させた。

November 17th - 19th

フォートワース:予選はドルダラーが首位 室屋は7位

予選3番手として登場したドルダラーは、50.614秒を記録して予選首位に立った。2位には0.262秒遅れでチェコ人パイロットのマルティン・ソンカが入った。この結果、ワールドチャンピオンを狙うソンカは、ラウンド・オブ・14でニコラス・イワノフと対戦することが決定した。

また、3位には最近好調を維持しているフランソワ・ルボットが入った。ルボットはドルダラーから0.396秒遅れの好タイムを記録した。

4位にはホームヒーローのカービー・チャンブリスが入り、5位にはソンカと同じくワールドチャンピオンを狙うオーストラリア人パイロット、マット・ホールが入った。ホールはラウンド・オブ・14でピート・マクロードと対戦することが決定した。

現在総合首位に立つマイケル・グーリアン(米国)は、前戦に続き予選では調子が出せず、51.708秒の9位に沈んだ。グーリアンはラウンド・オブ・14でクリスチャン・ボルトン(チリ)と対戦する。

November 17th - 19th

スピードウェイ型レーストラックの特徴

Red Bull Air Race World Championshipは、地上 / 水上レーストラックがほぼ同数になる場合が多く、2018シーズンは水上が5レース、地上が3レースとなっている。2018シーズンが例年と異なるのは、開幕から5戦連続で水上が続き、ラスト3戦に地上が集中しているという点だ。そして、ラスト3戦のうち2戦がスピードウェイを舞台にしている。

2014シーズンのワールドチャンピオン、ナイジェル・ラムは地上型を好んでいることを公言してきた。本人はその理由を次のように語っている。「より良好でエキサイティングなスピード感が得られる。高度の判断が簡単で、意図したレーシングラインをトレースできているかどうかの判断もしやすい」

一方、水上型は、穏やかで波が立っていない時は特にだが、水面が鏡のようになる。この状態は、高度や距離感の判断を難しくするが、一部のパイロットは、エアゲートと水面の色彩のコントラストがフライトを楽にすると主張している。

フォートワース:過去2レースを振り返る

フォートワースは、Red Bull Air Race World Championships 2014シーズンと2015シーズンにレースカレンダーに組み込まれた。2014シーズンは第6戦、2015シーズンは最終戦直前の第7戦として開催された熱い戦いを振り返っていく。

2014シーズン

November 17th - 19th

パイロンヒット減少が生み出した激戦

2018シーズンは、マスタークラス全パイロットが前年比減を実現している。2016シーズンでパイロンヒットがゼロだったパイロットはピート・マクロードだけだったが、彼も2017シーズンは第7戦終了時点で6回を計上していた。しかし、今シーズンは3回だけで、パイロンヒット率前年比50%減となっている。

今シーズンこれまでパイロンヒットを記録していないパイロットは2名で、当然ながら、共にRed Bull Air Race World Championship屈指のベテラン、カービー・チャンブリスとニコラス・イワノフだ。2017シーズン第7戦終了時点ではそれぞれ7回、3回を記録していたことを踏まえると、今シーズンは大幅に向上したと言える。

チャンブリスとイワノフに次ぐのが、2016シーズン王者マティアス・ドルダラーだ。2017シーズンのドルダラーは12回を計上していたが、今シーズンの彼はわずか1回で、前年比91%減を実現している。尚、王座を獲得した2016シーズンのヒット数は5回だった。2017シーズンのドルダラーにはタイトル防衛のプレッシャーがのしかかっていたのは明らかだが、2018シーズンの彼はよりリラックスしたアプローチでレースに臨んでおり、パイロンヒット率に関しては大きく進歩している。

インディアナポリス:グーリアンが優勝 室屋は12位

ファイナル4は、2016シーズンのアブダビ以来となるファイナル4進出を果たしたニコラス・イワノフ(フランス)が1番手で登場し、1分6秒951の好タイムを記録し、後続がこのタイムを破るのは難しいかと思われた。しかし、2番手として登場したグーリアンがいきなりイワノフのタイムを0.743秒上回り、トップに立った。

次は、ファイナル4初進出を決めたベン・マーフィー(英国)が登場。マーフィーはプレッシャーを感じさせないクリーンなフライトを見せたが、ベテラン2人のタイムを上回ることはできなかった。

4番手として登場したのが、ピート・マクロード(カナダ)だった。この日最速タイムを記録していたマクロードは、その再現はできなかったが、1分6秒736を記録してイワノフを上回る2位に入り、今シーズン初の表彰台を獲得した。

ホームレース優勝に歓喜の涙を流したグーリアンはレース後に「今、この瞬間は、シーズンは関係ない。インディでの優勝は最高だ。今日は、全パイロットが最終戦まで全力で戦いたいという気持ちを持っていたが、その通りになる」とコメントした。

October 6th - 7th